戦隊のパターンを作った『デンジマン』怒涛の最終回。物語の“主役”は敵勢力だった…?
最終回を盛り上げた、敵側のドラマ

きっかけとなったのは、中盤からレギュラーとなったバンリキ魔王という敵キャラでした。戦隊シリーズ初の第三勢力です。
このバンリキ魔王は一見ユーモラスに見える外見をしていますが、小さくした戦闘員を生きたまま食べて「珍味」と言うほどの恐ろしさを秘めています。
しかも、その戦闘力はデンジマンと互角以上。本作後半では「台風の目」と言える、不気味な存在感を秘めていました。
そのバンリキ魔王が己の野心のために動き始めてからが怒涛の展開となります。第48話「バンリキ魔王反乱」から続くストーリーは、戦隊シリーズ初めての連続ストーリーとなりました。
バンリキ魔王とその部下バンリキモンスによって占拠されてしまったベーダー一族の本拠地ベーダー魔城。これによりそれまでの戦局は一変します。
一族の戦闘司令官だったヘドラー将軍はバンリキ魔王に宿敵デンジマンを倒されるくらいならと、巨大化して戦いますがあえなく戦死。その死に対して、敵であるデンジマンたちは敬礼するという行動で敬意を表しました。
そして一族の長であるヘドリアン女王は、デンジマンではなくバンリキ魔王に対しての敵愾心をむき出しにします。そして、デンジマンだけでなく巨大ロボのダイデンジンさえ歯が立たなかったバンリキモンスの弱点を教えるという行動に出ました。
このヘドリアン女王の報せで強敵バンリキ魔王とバンリキモンスをようやく倒すことができたデンジマン。最後に残ったヘドリアン女王を倒そうと城に乗り込むデンジマンでしたが、女王はデンジマンたちに別れを告げて深い眠りにつくというエンディングを迎えます。
この最終回までの連続ストーリーは、それまでと違って敵側であるベーダー一族を中心に物語が進んでいきました。終盤で、これほどまでに敵側を中心に描いた作品は当時としてはなかったと思います。
そしてこの後、「敵側の内部分裂」という構図は、80年代特撮作品の定番となりました。
しかし、本作が後年同じように内部分裂していった悪の組織と決定的に違うのは、悪側の共倒れがなかったら、デンジマンが勝利したかどうかわからないという点です。
そう思わせるだけの敵側の深みのあるドラマ作り。本作が名作と言われ続けるのは、戦隊シリーズの基本を作ったということだけではなく、この最終回までのドラマが多くのファンの心に響いたからだと思います。
制作時に壮大な物語を描こうとしてスタートした本作は、敵側である悪の魅力を存分に描いた大河ドラマとして結実したのでした。
(加々美利治)