週65本視聴するアニメライターが選ぶ「人生を変えた」3作品。先入観を砕く面白さ!
『まどマギ』『進撃』に匹敵する神話は、いま生まれている可能性も…
●“怪作にして快作”の最高峰『LOST SONG』(2018年)

本作は、声優の田村ゆかりさんと歌手の鈴木このみさんが演じる、歌うたいの少女ふたりを軸としたファンタジー物語です。内容に少しでも詳しく触れるとネタバレになる作品のため、「とにかく観てほしい」としか言えないのがもどかしいところです。「!?!?」となってからのハラハラ度は、3年弱経った今も比肩する作品を知りません。
この作品は本編の枠外での取り組みも印象的でした。地上波最終回におけるCMを利用した告知、再放送とアニソンの祭典「Animelo Summer Live」の連動、そして朗読と歌で物語のフィナーレを紡いだパシフィコ横浜のイベントなど、視聴者を驚かせ、楽しませようという試みが盛りだくさんで、さらに魅力を増した本作の物語は『魔法少女まどか・マギカ』(※)『進撃の巨人』と並ぶ2010年代を象徴する神話と言っても過言ではありません。
当時の筆者はこの傑作を多くの人に観てもらいたいと思いさまざまな形で活動しましたが、手応えは少なく、結果として「真に面白いアニメを勧める人間として、もっと強い影響力を持たなければ……」という思いを新たにしました。
●現在進行中のカオティック演劇アイドルアニメ『ゲキドル』(2021年)

「今やっているアニメが一番旬で美味しい」と信じ、毎日多くの作品に少しずつ人生を変えられている……そんな思いから、最後は2021年冬クールでもっともエキサイティングな作品を紹介します。『ゲキドル』は、「世界同時都市消失」と呼ばれる災害から復興する世界で、3Dホログラムを使った演劇“シアトリカルマテリアルシステム”のステージに立つことを目指す少女たちのお話です。
視聴前は「演劇がモチーフの青春アイドル的な作品かな」と思っていたのですが、そこにSFや百合、サイコサスペンスといった刺激的な要素をぶち込み、さらにキャラクターたちの強い情念(とトリック)で加速し、軽やかに想像を超え続けていく物語は、比喩表現ではなく本当に「毎週手に汗握る」展開です。
どんなオチになるのかがまったく読めない本作は、熱血王道を突っ走る『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』や、ファニーさをたたえた『アイドールズ!』『アイ・チュウ』(※)など、アイドルアニメ大豊作の今期でも特筆すべきものでしょう。
ほかにも、野島伸司脚本らしさがたまらない『ワンダーエッグ・プライオリティ』、どんな映像を観られるかというワクワクでは近年随一の『EX-ARMエクスアーム』、盤石過ぎる続編ものやそれぞれに痛快な“なろう”原作アニメなどなど……今期もいつものように面白い作品が目白押し。制作に多大な苦労があると想像できる「アニメ」という芸術が、これだけ生まれ続ける奇跡に感謝しつつ、これからも視聴者として、面白い作品を紹介するライターとして、存分に楽しんでいきたいです。
(はるのおと)
※タイトルの・部分は、正式には星印になります。