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異色作『ウルトラマンネクサス』制作陣の「苦肉の策」が泣ける。真の敵は「制作費」?

ウルトラシリーズなどが見放題の有料サービス「TSUBURAYA IMAGINATION」の提供開始にウルトラファンが歓喜する一方、平成の“超異色作”「ウルトラマンネクサス」がラインナップされていないことを嘆く声もあがっています。今なお根強い人気を誇る「ネクサス」が、いかに苦境のなかで制作していたかを解説します。

ミニチュアが組めない、怪獣が作れない、ならば…

「ウルトラ特撮 PERFECT MOOK vol.17ウルトラマンネクサス」(講談社)
「ウルトラ特撮 PERFECT MOOK vol.17ウルトラマンネクサス」(講談社)

 ウルトラマンが怪獣と戦っている裏では、いつだってスタッフが制作費の問題と戦っていました。当たり前のように新たな怪獣が出現し、ミニチュアの街を破壊する……そんな映画並みのスケールの映像作品を毎週、放映していたのです。いくら視聴率が高かろうと、玩具の売れ行きが好調であろうと、円谷プロは概して慢性的な自転車操業状態にありました。

 それでも円谷プロは、平成に入っても新たなウルトラシリーズを生み出し続けます。ところが、『ウルトラマンコスモス』の放映後にはスキャンダルや海外のキャラクター使用権をめぐる裁判の敗訴など、金策的にもさらなる窮地に追い込まれます。

 そのような苦境のなか制作されたのが、2004年10月に放映開始の『ウルトラマンネクサス(以下、ネクサス)』でした。今もなおまざまな視点から「伝説」とされている『ネクサス」ですが、今回は「制作費がないからこそ生まれた設定」という観点から、本作の異色ぶりを紹介します。

●怪獣の着ぐるみが高い……「改造 & 複数回登場」でストーリーを重厚に!

 比較的潤沢な資金に恵まれた平成3部作と比べ、『ネクサス』は当初から制作費削減が重要視されていました。とりわけ怪獣(ビースト)の着ぐるみをどうするかは喫緊の課題でした。

 なにせ普通に作れば1体およそ100万円以上。毎週、新たな怪獣を登場させることはまず不可能でした。そこで初代『ウルトラマン』からすでに行われていたように、過去のビーストを改造したり複数のビーストをつなげたりして、しばらくは凌いできましたが、それも限界ということで同じビーストが複数回にわたって登場することになります。

 確かにカタルシスには欠けるかもしれませんが『ネクサス』ならではとも言える重厚なドラマパートに、膨らみをもたらすことになります。

「ウルトラマンネクサス TV COMPLETE DVD-BOX」(バンダイビジュアル)
「ウルトラマンネクサス TV COMPLETE DVD-BOX」(バンダイビジュアル)

●大規模なロケができないなら……防衛チームを隠密組織にしてしまおう!

『ネクサス』に登場する地球防衛組織TLTの戦闘部隊であるナイトレイダーは、秘密組織です。科学特捜隊やウルトラ警備隊が一般市民の憧れの的であったのに対し、ナイトレイダーは存在自体が知られていません。秘密裏にビースト処理の任務を遂行するプロフェッショナル集団です。こうした設定の裏には、多人数を動員した大規模ロケを避けられるなど、予算削減面で大きなメリットがありました。

●ミニチュアセットにお金がかかるなら……毎回同じバトルゾーンに移動!

『ネクサス』はビーストとの戦闘において「メタフィールド」と呼ばれる異空間に移動する……という独自の設定を導入します。一般市民がビーストを認知する危険性を大幅に軽減させるというのが物語上の理由でしたが、同時に「ウルトラマンもビルを壊しているのでは」というシリーズ自体が内包していた矛盾への回答としても、機能していました。

 ただ、実際のところはミニチュアセットを組む予算を抑えるために考案された苦肉の策だったともいえます。

 物語中盤から『ネクサス』をも包括する一大企画『ULTRA N PROJECT』の合流もあり、実に輻輳(ふくそう)的なシナリオが待ち受けていたのですが、主要ターゲット層である子供たちからの人気を獲得できず、視聴率の面で苦戦を強いられ、残念ながら放送期間短縮という結果に終わります(予定されていた劇場版も中止となりました)。

 放送当時から「グロテスク」「子供番組らしくない」との批判も相次ぎ、最後まで賛否両論だった『ネクサス』ですが、厳しい予算のなかで絆(ネクサス)という主題に最後まで向き合い続けた作品でした。今こそ、「TSUBURAYA IMAGINATION」で完全版の配信に期待してしまいます。

(片野)

【画像】異色でもかっこいい! 『ウルトラマンネクサス』のポーズ(5枚)

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