円谷プロの影のヒーロー『ミラーマン』最終回 主人公の京太郎を襲った「切ない結末」とは?
最終回に待っていた驚きの結末
気になる『ミラーマン』最終回は、第50話「地球最後の日」、第51話「さよならミラーマン」と2週にわたるエピソードとなっていました。なかなか地球を侵略できないことから、インベーダーたちは母星である惑星Xを地球に衝突させるという無茶な作戦を実行に移すのです。
巨大な惑星Xとぶつかれば、地球は滅亡してしまいます。地球滅亡の日が刻々と迫るなか、人類はようやく反重力装置を完成させました。一方、ミラーマンは反重力装置を守るため、刺客として送られてきたエレキザウルス&デッドキングという2体の怪獣と死闘を繰り広げます。
ミラーマンの奮闘によって地球は守られ、インベーダーは全滅しました。戦いの日々は終わったのです。これで京太郎は普通の若者として、幸せな青春を謳歌できる……。そう思った矢先、最後の最後に驚きの結末が待っていました。
ミラーマンの危機をこれまで何度も救ってきたミラーマンの父親が姿を見せ、インベーダーによって荒廃してしまった二次元の世界を復興するようにと京太郎に命じたのです。京太郎の育ての親である御手洗博士もこれに賛成します。京太郎自身の意思は、おかまいなしでした。
御手洗博士の娘・朝子(澤井孝子)とお互いに好意を寄せ合っていた京太郎ですが、彼女に別れを告げて二次元の世界へと去っていくことになります。残された朝子のことを思うと、せつなくなるエンディングでした。
限られた予算とスケジュールとの戦い
この最終回を撮ったのは、『帰ってきたウルトラマン』の名エピソード第33話「怪獣使いと少年」で知られる東條昭平監督です。また、大映の特撮時代劇『大魔神』三部作(1966年)の特撮監督を務めた黒田義之監督も、『ミラーマン』で多くのエピソードを撮っていました。『帰ってきたウルトラマン』と並行して『ミラーマン』を制作していた円谷プロの、当時のスタッフの層の厚さを感じます。
とはいえ、円谷プロの看板番組『ウルトラマン』の流れをくむ『帰ってきたウルトラマン』に比べると、『ミラーマン』は制作費が限られていたようです。一度倒したはずの怪獣たちが再登場することが何度もあり、ミニチュアの街も急ごしらえ感がありました。
ある種の理不尽さも感じさせた『ミラーマン』の最終回は、たくさんの特撮ドラマを手掛けるスタッフの心情を投影したものではないでしょうか。限られた予算とスケジュールのなか、忙しく働くスタッフたちには家族や恋人とゆっくり過ごす余裕はなかったことでしょう。「この作品を撮り終えれば、ひと息つける」と思っていても、また新しい番組が待っています。彼らは大切な人たちに申し訳ないと思いつつも、自分を必要とする現場があることにやりがいも感じていたのかもしれません。
「朝焼けの光の中に立つ影は、ミラーマン」
徹夜明けの朝、「ミラーマンの唄」を口ずさんだことのあるファンも少なくないのではないでしょうか。ウルトラ兄弟に比べると影に隠れがちな『ミラーマン』ですが、そんな控えめなところも含めて応援したくなる特撮ヒーローだったように思います。
(長野辰次)