「二度とやりたくない!」初代『ウルトラマン』“巨大フジ隊員”を演じたヒロインの壮絶撮影の裏側
特撮ドラマ『ウルトラマン』が放送60周年を迎えるなか、TVシリーズで唯一“巨大化”を経験したヒロイン「フジ・アキコ隊員」。演じた女優は当時を振り返り、「二度とやりたくない」と本音を明かしていました。
演じた本人の本音は?

特撮ドラマ『ウルトラマン』が、1966年の放送開始から60周年を迎えます。怪獣や宇宙人が数多く登場した作品ですが、巨大化した「人間」もいました。「フジ・アキコ」隊員です。TVシリーズの歴代ヒロインで巨大化したのは、この人だけだとされています。
第33話「禁じられた言葉」では、「メフィラス星人」に操られた「巨大フジ隊員」が街に出現。ビルを破壊し、電線を突き破り、地上からの攻撃を受けながら進む姿は、まさに怪獣そのものでした。当時の特撮セットは25分の1スケールだったため、身長155cmのフジ隊員は約40mの巨人として撮影されたことになります。
巨大な人間が街を踏み歩く映像は、当時としては非常に新鮮でした。ビルをなぎ倒し、火花を散らしながら進む姿は強烈なインパクトを残しました。
では、その巨大化を演じた本人はどう感じていたのでしょうか。答えは、「二度とやりたくない!」でした。
●本音の私は「迷惑な話」
フジ隊員役の桜井浩子さんは、著書『ウルトラマン創世記』(小学館)で当時を振り返っています。読むと、見るのと演じるのでは大違いだったことがよく分かります。
桜井さんが特撮班のスタジオに入るのは、このときが初めてでした。隊員服姿で撮影に臨み、巨大感を出すため、動きはすべてゆっくり行うよう指示されます。
撮影には3つの難関がありました。
第1は「ビル破壊」です。ミニチュアのビルは驚くほど硬く、壊すにはあらかじめ亀裂を入れた場所を正確に叩かなければなりません。しかし、メフィラス星人に操られた雰囲気を出すため、目の焦点をぼんやりさせて演技をするよう求められ、目印はほとんど見えません。2回NGを出し、違う場所を叩いてしまったため、手袋越しでも腕がしびれるほど痛かったそうです。
第2は「電線に触れる」場面でした。顔のすぐ近くで火花が散る恐怖に耐えながら、無表情で歩き続けなければなりませんでした。
最後は「地上からの攻撃」です。警官や自衛隊の銃撃を受ける場面では、胴に火薬を仕込んだ「弾着(だんちゃく)」を装着。導線を通して点火し、着弾したように火花を飛ばす仕掛けです。本番では目を閉じずに演じ切りましたが、その衝撃は想像以上でした。「ヘルメットをしていたにもかかわらず、私の耳の底はジーンとした。隊員服に火はつかなかったが、目の前が真っ白になり、脳の奥底で線香花火がいつまでもパチパチと火花を散らしているようだった」、と振り返っています。
こうして初めてづくしの特撮撮影は終了。しかし翌日まで耳のしびれは残り、腕には2、3cmほどのアザができたそうです。
ところが、完成した映像を見た桜井さんは、「たったこれだけ?」とがっかりします。電線の火花も弾着の爆発も、思ったより地味に映っていたからです。
さらに後年、「巨大フジ隊員」は身長40m、体重1万tというプロフィール付きで怪獣図鑑に掲載され、怪獣カードでもレアカードとして人気を集めるようになりました。
桜井さんは「どうせ怪獣にするなら、もっと美しく変身させて欲しかった」と、その章を結んでいます。
見る側には痛快な名場面でも、その裏ではビルを壊し、火花を浴び、爆破に耐える過酷な撮影がありました。巨大フジ隊員は、特撮史に残る名シーンであると同時に、出演者の苦労が詰まった場面でもあったのです。
(玉城夏)
