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今も続編が登場する『装甲騎兵ボトムズ』 異色すぎてロボットアニメの代表格に

『装甲騎兵ボトムズ』は1983年から84年にかけて放送されたロボットアニメです。主人公は戦うことしか知らない兵士、愛機は使い捨ての大量生産品と、当時のアニメとしては極めて異例な設定となっており、作中に漂うハードボイルドな雰囲気や世界観も熱烈な支持を受け、今なお代表的なロボットアニメ作品として強い存在感を誇ります。

ハードボイルドな世界観を持つ『装甲騎兵ボトムズ』

主人公のキリコが大きく描かれる、「装甲騎兵ボトムズ Blu-ray Perfect Soldier Box」(バンダイナムコアーツ)
主人公のキリコが大きく描かれる、「装甲騎兵ボトムズ Blu-ray Perfect Soldier Box」(バンダイナムコアーツ)

 1970年代から80年代にかけて、膨大な数のロボットアニメが作られた時期がありました。『マジンガーZ』『ゲッターロボ』『超電磁ロボ コン・バトラーV』『機動戦士ガンダム』など、歴史に残る名作を数え上げればキリがありません。

 それらの作品のなかには、『ゲッターロボ』や『機動戦士ガンダム』のように、直接の続編や派生作品、リメイク作品などさまざまな形で作られ続けているタイトルも存在していますが、TV放映の1作品のみで終わる作品が多いのが実情であり、新しいおもちゃを売り続けなければいけないロボットアニメの特性上、当然の話でもありました。

 しかし唯一、本放送から数十年が経っても同じ作品が同じ主人公で、同じ世界観のもとで、同じスタッフが作り続けたロボットアニメが存在しています。それが『装甲騎兵ボトムズ』(以下、ボトムズ)です。

 2022年3月20日(日)19:00から、BS12でOVA『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』が放送されます。この機会に、『ボトムズ』がロボットアニメのなかでいかに「異色」だったか、改めて振り返りたいと思います。

『装甲騎兵ボトムズ』は1983年から1984年にかけて全52話が放送された作品で、監督は『太陽の牙 ダグラム』を手掛けた高橋良輔氏、キャラクターデザインは劇画的な絵を得意とする故・塩山紀生氏が担当しており、当時のアニメとしては極めて異例ともいえるハードボイルドな世界観の物語が展開されました。

 TVアニメ終了後も人気はまったく衰えず、今回放送される『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』を皮切りに、2011年に発売された『装甲騎兵ボトムズ 孤影再び』まで、数多くの続編が制作されています。2020年には、高橋良輔氏による小説「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」も連載開始しています。

 なぜ『ボトムズ』は多くの人の心を引き付けたのか。その理由のひとつに、本作が持つ画期的な特徴が大きな影響を与えていることは間違いありません。

 まず、主人公が「戦いしか知らない完成された兵士」である点は、主人公の成長物語が描かれることが多かったアニメ作品としては、衝撃的な設定でした。主人公であるキリコ・キュービィは作品開始時点でプロの軍人であり、かつて第24メルキア方面軍所属 惑星占領軍戦略機甲兵団特殊任務班X-1こと「レッドショルダー」に所属し、多くの人を手にかけていたのです。

「レッドショルダー」は、まずは味方同士を殺し合わせ、生き残った者を鍛え上げるという、言語を絶する手法で構成された部隊でした。過酷な戦場からも生還し、味方の犠牲をいとわないといわれる苛烈な戦いぶりから「吸血部隊」とも呼ばれており、戦場では畏怖(いふ)の対象となっていたのです。手を血で汚した人間が主人公を務めることは、極めて斬新で強いインパクトを持っていたのです。

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