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武器は充実、防御はスカスカ…『ボトムズ』の「スコープドッグ」は非情な戦場の象徴?

『装甲騎兵ボトムズ』に登場したスコープドッグは、主人公が愛用する機体でありながら使い捨ての消耗品として扱われ、主人公機が特別な存在とされていたロボットアニメの世界に、大きな衝撃を与えました。兵士が乗る大量生産品として設計製造された、スコープドッグの魅力に迫ります。

使い捨ての大量生産品

主人公のキリコと、座り込むスコープドッグが描かれる、TVアニメ『装甲騎兵ボトムズ』キービジュアル  (C)サンライズ
主人公のキリコと、座り込むスコープドッグが描かれる、TVアニメ『装甲騎兵ボトムズ』キービジュアル  (C)サンライズ

 1983年の放送当時から多くの視聴者の心をつかみ、現代まで続編が作られている『装甲騎兵ボトムズ』(以下、ボトムズ)のOVA『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』がBS12で放送されます。この機会に、『ボトムズ』の設定や世界観を象徴する「メカ」について振り返りたいと思います。

 ATM-09-ST スコープドッグ。
 ギルガメス軍正式アーマードトルーパー(以下、AT)。

 全高は約3.8メートル。重量は6トンを超える人型の鉄の塊。足裏部に備え付けられたローラーダッシュ機構が生み出す最高速度は80km以上を超えており、人間の2.5倍から3倍程度の大きさの戦闘マシーンに、絶大な機動力を与えています。

 主兵装は30mm口径のGAT-22 ヘビィマシンガン。120発入りの大型弾倉は高い継戦能力を保証し、さらなる破壊力を必要とするなら、銃砲身上に備えられた単発のグレネード発射機が要望に応えます。

 さらにSMAT-38 ショルダーミサイルガンポッド、SAT-03ソリッドシューター、ハンドガンであるGAT-49mmペンタトルーパーなど、さまざまな火器を使用可能であり、熟練者が使用するならば、圧倒的な火力を戦場に振りまく力を備えています。

 しかし、スコープドッグの装甲は極めて薄く、最も厚い部分で14mm、薄い部分で6mmしかありません。重火器に対する防御力はないに等しく、作中でもしばしば銃弾が貫通する場面が描かれてます。

 加えて、ATは内燃機関を装備しておらず、代わりにマッスルシリンダーと呼ばれる一種の人工筋肉により四肢を駆動させています。しかしながらマッスルシリンダーは気化性と引火性が高いポリマーリンゲル液と呼ばれる液体に満たされており、ATはわずかな被弾でも引火爆発しやすいという、悲惨な特性を持っています。

 戦場に投入されれば高い機動性と火力を発揮し、反撃を受ければ搭乗者の命もろともあっさりと散っていく、戦場の主役にして儚(はかな)い存在、それがスコープドッグなのでしょう。

 なお、スコープドッグには原型機として「ATM-08ST スペンディングウルフ」と呼ばれる機体が存在しています。基本性能に大差はないのですが、生命維持装置や自動消火装置など、パイロットを保護する装備が備えられているのが特徴です。

 その分コストが高騰したため、軍の上層部はパイロットの保護機能をオミットし、スコープドッグとして量産した経緯があります。スコープドッグのドッグ(犬)はウルフ(狼)に劣るという皮肉が込められているという説もあるほどです。

【画像】形もいろいろ選べます…「スコープドッグ」のバリエーション機(5枚)

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