マグミクス | manga * anime * game

アニメ業界が舞台の『ハケンアニメ!』 ハイクオリティな劇中アニメは必見?

一流スタッフが競作した本気の劇中アニメ

瞳が監督をつとめるアニメ作品、『サウンドバック 奏の石』
瞳が監督をつとめるアニメ作品、『サウンドバック 奏の石』

 アニメ業界の裏側を描いたTVアニメ『SHIROBAKO』と同様に、『ハケンアニメ!』でも監督、プロデューサー、原画、脚本、編集、声優、宣伝……さまざまな職種の人びとが登場し、多様な個性がひとつにまとまって、アニメ作品が作られていく過程が描かれていきます。そんな「お仕事映画」としての面白さだけでなく、劇中アニメ『リデル』と『サバク』のクオリティの高さも特筆されます。

 長いスランプに苦しんだ王子の復帰作『リデル』は、かなりユニークな魔法少女ものです。魔法少女たちはそれぞれバイクに乗り、1年に一度開かれるバイクレースで競い合うことに。第1話で6歳だった主人公は、最終話では18歳になります。レースを通して、少女たちの成長が描かれていきます。キャラクター原案は『魔法少女まどか☆マギカ』の岸田隆宏氏が手掛け、超ポップでカラフルな世界観が垣間見えます。

 瞳の監督デビュー作『サバク』は、田舎で暮らす少年少女たちが侵略者と戦うSFジュブナイルもの。奏(かなで)と呼ばれる不思議な石に大切なものを捧げることで、石は巨大ロボットに変形します。

 ミステリアスな展開は、トラウマアニメとして知られる『ぼくらの』を彷彿させます。メカデザインは『機動戦士ガンダム00』の柳瀬敬之氏が担当し、重量感ある巨大ロボットたちが迫真のバトルを見せます。主人公の声優役で、『ウマ娘 プリティーダービー』の高野麻里佳さんが実写映画デビューしているのも見逃せません。

 原作者の辻村さんは、劇中アニメの制作スタッフがイメージを構築しやすいよう、『リデル』『サバク』それぞれ12話分のプロットを用意したそうです。映画『ハケンアニメ!』では両作の予告映像や最終話のクライマックスシーンなどを観ることができますが、どちらも、とても気になる内容です。

「孤独さ」はクリエイターにとって大切な養分

王子が監督をつとめるアニメ作品、『運命戦線リデルライト』
王子が監督をつとめるアニメ作品、『運命戦線リデルライト』

 本作をより味わい深くしているのは、劇中アニメの展開と本編の主人公たちとの心情が、しっかりとリンクしているという点です。

 王子はデビュー作『光のヨスガ』で主人公が死ぬというエンディングを考えていたのですが、テレビ局側の意向もあって実現できませんでした。商業アニメでは自分の思ったような作品はできない……というジレンマを王子は抱えています。ジレンマは自分でかけた「呪い」でもあります。王子は8年ぶりの監督復帰作となった魔法少女もの『リデル』で、その呪いを解こうとします。

 一方の瞳は、初めての監督作『サバク』がちゃんと視聴者に届いているのか不安で仕方ありません。ビンボーな家庭で育った瞳は、子供の頃に友達がみんな持っていたアニメグッズを買ってもらうことができずにいました。寂しい少女時代を過ごした瞳は、そんな幼き日の自分自身を励ますように『サバク』の制作にのめり込みます。

 一見すると派手キャラに見える王子も、優等生タイプの瞳も、どちらも心の奥に孤独さを抱えています。大勢のスタッフやキャストと一緒に練り上げていくアニメ作品ですが、TVの前で孤独さを抱えて待っている視聴者の心に届いたとき、その孤独さは共鳴しあい、豊かな体験に変わっていきます。視聴率やDVDの売り上げなどでは計ることのできない、とても貴重な体験です。

 ハケンアニメの座を懸けて闘う瞳と王子は、ともに孤独さを大切にしているクリエイター同士でもあります。豊かな「孤独さ」を知る主人公たちがどんな作品を完成させるのか、ぜひ注目してください。

(長野辰次)

※映画『ハケンアニメ!』は、2022年5月20日(金)より全国ロードショー。
原作/辻村深月 監督/吉野耕平 脚本/政池洋佑 音楽/池頼広
出演/吉岡里帆、中村倫也、工藤阿須加、小野花梨、高野麻里佳、前野朋哉、矢柴俊博、新谷真弓、松角洋平、水間ロン、前原滉、みのすけ、古舘寛治、徳井優、六角精児、柄本佑、尾野真千子 配給/東映 
(C)2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

【画像】内容がとても気になる? 『ハケンアニメ』作中に登場する2作品(14枚)

画像ギャラリー

1 2 3