「PS5」普及を阻む4つの壁 コロナ、転売だけでない「悪循環の連鎖」
ゲームメーカー、PS5以外にソフト発売を分散へ

部品不足で生産数が落ち込み、供給が少ない点を狙った転売によって入手難が加速。これだけでも憂うべき事態ですが、この状況はさらなる悪化に繋がります。それは、ゲームソフトを作るソフトメーカーの動きにあります。
ソフトが売れる最大の理由は「面白さ」ですが、どれだけ素晴らしいソフトでも、例えば100台しか売れていないゲーム機で販売した場合、最大でも100本しか売れません。しかし、1000人中ひとりしか買わないソフトでも、ゲーム機が1億台売れていれば、10万本の売上になります。つまり、母数=ゲーム機の販売数もまた、重要なポイントなのです。転売屋が問題なのも、在庫のままだとこの母数が伸びない点にあります。
PS5の母数が伸びないと十分な売上が見込めない恐れがあるので、ソフトメーカーはPS5でゲームを出すことをためらう可能性があります。またPS5で出しても、PS4やNintendo Switchを含めたマルチ展開を行い、リスクの軽減を狙うことも。こうした状況が続くと、「PS5がなくても、気になるソフトは別のゲーム機で遊べるしいいや」となり、これもまたPS5の普及にストップをかけます。
●活気づくPC市場、SIEも見逃せないほどに
また近年は、ソフトメーカーのマルチ展開に、SteamなどのPC向けプラットフォームが加わる傾向が強まっています。以前は、国内のソフトメーカーによるPC展開は控えめでしたが、ここ数年は発売日に同時リリースするケースもよく見られ、注力するメーカーが増えました。
例えば、スクウェア・エニックスが放つオープンワールドアクションRPG『FORSPOKEN』も、PS5版とPC版の展開を予定。母数を確保する道のひとつとして、PCという選択肢が重要なものになりつつあります。
国内におけるPCユーザーの数は、家庭用ゲーム機のユーザーと比べると決して多くはありません。ですが、近年はPCユーザーによるゲーム実況の影響を受けた方や、供給不足が続くPS5の入手を諦めた人などが、PCへと移行する流れが増加しつつあります。また、最近活気づいているゲーミングPCの普及も、こうした動きを後押しします。
そもそも海外ではPCユーザーが相当数いるため、Steamなどに展開することで、海外PCユーザーを母数に加えるチャンスが生まれる点も見逃せません。こうした狙いからソフトメーカーがSteamをマルチ展開のひとつに加えると、その分だけPS5が得られたかもしれない販売数が相対的に減り、これもまた普及を阻む壁になり得ます。
しかし、PC向けゲーム市場をSIEは敵視してはおらず、むしろ積極的に活用する姿勢も見せています。5月26日に行った事業説明会のなかで、2025年には自社タイトルの約半数をPCとモバイル向けに展開するとSIEが発表。残りの半数はPS5向けにリリースする模様です。
SIEのこうした動きは、PC市場への前向きな参入なのか、無視できなくなり重い腰を上げた結果なのか。PS5の普及という点に絞って見た場合、プラスの要素になるかは難しいでしょう。
現時点のPS5は部品不足から供給が追いつかず、その入手難を突く形で転売が横行し、状況の停滞からユーザー離れなどを一部で招きました。また、母数の伸び悩みからソフトメーカーがPC版を含めたマルチ展開に力を入れるほど、「PS5ならでは」の魅力が相対的に減少し、巡り巡ってPS5の普及に足止めがかかります。
悪循環が連鎖的に起こっている一面もある、現在のPS5。人気ゲーム機だからこその事態ですが、その人気があるうちに状況を改善できるのか。多くのユーザーが今後の動きを真剣に見極めようとしています。
(臥待)












