『ヤマト2199 星巡る方舟』BS12で放送 「波動砲」封印で古代進はどう戦う?
「波動砲」を封じられ、試される古代進の真価

出渕監督によるオリジナル脚本作『宇宙ヤマト2199 星巡る方舟』の見どころは、イスカンダル星から地球への帰還中のヤマトは「波動砲」を封印されているという点です。「波動砲」は科学力で勝るガミラス帝国を揺るがすほどの、すさまじい破壊力を持っていました。ヤマトにとっての絶対的な切り札です。
しかし、イスカンダル星の女王・スターシャからは、「コスモリバース」を譲渡する代わりに「波動砲」の使用禁止を求められました。沖田艦長は、「波動砲」を使わないことを約束します。切り札なしで、どうやってヤマトは難局が待ち受ける帰路を走破できるのかが、今回の重大なテーマとなっています。
ヤマトにとって「波動砲」は頼みの綱のようなものです。しかし、言い換えれば、「波動砲」さえあれば、どんな強敵でも倒すことができたわけです。『ウルトラマン』にとっての「スペシウム光線」、人気絶頂期のアントニオ猪木選手が使っていた「延髄斬り」のようなものでしょう。
出渕監督はあえて「波動砲」という必殺技を禁じ手にすることで、古代進たちが知恵と勇気を振り絞って難問に立ち向かう姿を描いています。古代進の人間的な成長を感じさせます。
古代守=キャプテンハーロックという幻の設定
究極の破壊兵器「波動砲」の封印問題と並び、本作では「地球人はガミラス人と理解し合うことは可能か?」というテーマが、『宇宙戦艦ヤマト2199』に続いて盛り込まれています。
戦争によって仲間や家族を失った地球人、ガミラス人はお互いに深く憎しみ合っています。一触即発の状況下で、古代進は大好きだった兄・古代守の言葉を思い出すのでした。
「たとえ生まれた星が違っていても、俺たちは理解し合える」
それがガミラス軍の捕虜(とりこ)となりながらも、イスカンダル星のスターシャに救われた古代守が、最期に残した言葉でした。
オリジナル版では、冥王星宙域の会戦で戦死したはずの古代守は実は生き延びて、松本零士氏の人気キャラクター『宇宙海賊キャプテンハーロック』となって、ヤマトの行方を見守るという設定も検討されていたことが知られています。
リメイク版『宇宙戦艦ヤマト2199』には松本零士氏は参加していないこともあり、古代守=キャプテンハーロックという設定は幻のままとなってしまいましたが、兄弟のつながりを『宇宙戦艦ヤマト2199』も『星巡る方舟』も強く感じさせるものとなっています。
古代進は沖田艦長という父性的存在、そして「波動砲」という大量破壊兵器なしでどう戦い抜くのか? 子供のころにオリジナル版『宇宙戦艦ヤマト』に夢中になった世代にとって、『星巡る方舟』はリアリティーを感じさせる物語となっています。
(長野辰次)