人が死ぬ煙突のせいで ガミラス三段空母へ続く(?)「赤城」三段甲板の試行錯誤
空母黎明期にのみ存在した多段式甲板は、黎明期ゆえの試行錯誤の産物でもあります。空母「赤城」の三段甲板とその顛末には、姿形もさることながら、そうした「技術と創造性の結晶」といった面で惹かれるものがあるようです。
排煙がヤバい深刻なレベルで

マグミクスが2025年6月5日に配信した記事「ガミラスの『三段空母』現実では…空母『赤城』に見る多段式空母がアカンかったワケ」に、多くの反響が寄せられました。
記事では、1942年6月5日に行われたミッドウェー海戦で沈んだ空母「赤城」の、建造当初の姿である「三段甲板」について、『宇宙戦艦ヤマト』に登場するガミラス帝国の「三段空母」こと多層式宇宙空母を交え解説しています。
1920年代にワシントン海軍軍縮条約の制限下で巡洋戦艦から空母へと改装された「赤城」は、当時の小型非力な艦載機に合わせて発艦と着艦の飛行甲板を物理的に分けるという発想で三層構造を採用しました。すなわち、最上段は着艦と大型機の発艦、中段は砲塔や艦橋と機体格納、下段は小型機の発艦用です。
しかし実際には、下段は使いにくく、中段も砲塔と艦橋の設置で飛行甲板として使えず、やがて上段のみを運用する形となってしまいます。航空機の発達とともに飛行甲板の延長が必要となり、「多段」による縦利用よりも長く平らな甲板での横方向運用の方が合理的であることが判明したのです。こうして赤城は1938年に、一段の全通式飛行甲板へと改装されました。
これについて、読者からは技術面での意見や感想が続々と寄せられています。他国の空母、特にアメリカ空母の情報も多く、「エセックス級は格納庫甲板の左右にもカタパルトを装備していた」「(側方射出カタパルトは)ヨークタウン級から搭載されていたが実用性はほとんどなかった」といった投稿が見られました。
格納庫の開放式と密閉式をめぐる議論も聞かれました。「アメリカは開放式で爆風が逃げやすい」「日本は荒波の太平洋での運用を想定して密閉式」といった設計の違いが語られています。「(密閉式は)エンジンの排気ガスがこもる問題があった」とも。
排気といえば、「赤城」は右舷に下方に向け設けられた煙突のため、艦内の居住環境があまりよろしくなかったことでも知られました。これは甲板上にエンジンの排煙が支障しないようにとの設計でしたが、その右舷側後方では排煙が流れ込むため、窓を開けられなかったといいます。そのうえ赤痢などの病気も発生していたことから、「人殺し長屋」という蔑称までつけられたとか。
「やってみないと分からない問題点は多々あった」「黎明期は摩訶不思議な構造が生まれて創造性があり楽しい」といった声にも聞こえるように、三段甲板や煙突の取り回しなどは、空母黎明期ゆえの試行錯誤が垣間見れる部分でもあります。
ともあれ「赤城」の三段甲板は実用的ではありませんでしたが、現代にまさかの復活を遂げる可能性について言及する意見も聞かれました。「これからはドローンが主体になる。多層式は有効な構造になると思う」「韓国でも多段式ドローン母艦のコンセプト展示があった」といったように、実のところリアリティのあるお話でもあるのです。ガミラス帝国の出現を待つまでもなく、多段空母(甲板)が改めて現実のものとなる日は近いかもしれませんね。
(マグミクス編集部)