2年間完走、アニメ『ダイの大冒険』が復活できた複雑な事情 放送中は言えなかった「ネタバレ演出」
『ダイの大冒険』復活の裏にあったファンの熱意

前述しましたが、今回のTVアニメでは完結した作品ならではの演出がいくつもされていました。これは異例のことです。なぜならマンガのTVアニメ化は原作が連載中なことが普通。完結した作品を改めてTVアニメ化することは、それほど多くありません。
実はこれには理由があります。1991年にTVアニメ化された『ダイの大冒険』は事情により途中で終わってしまいましたが、製作の東映アニメーションのスタッフはいつか続編をスタートさせるつもりでした。
もっとも、リスタートすることは容易ではありません。TV局、出版社、スポンサーといったさまざまな力関係が複雑にからみ合っていたからです。そういった事情から続編は事実上のとん挫、何年もの空白期間から自然に立ち消えとなりました。
そして、想定外のことも起きます。権利関係で問題があり、『ダイの大冒険』の映像が一時的に封印状態になりました。これによりネットでの映像配信やディスクでのソフト化といったことも一時はNGとなります。そのため、長らく放送当時販売されたビデオソフトのみが唯一の映像作品となりました。
そういった理由から20年近く動きのなかった『ダイの大冒険』が復活できた理由はなんでしょう? それは当時、ファンとして『ダイの大冒険』を見ていた世代が製作サイドに出てきたことでした。この前作TVアニメとのしがらみのない世代が率先して動いたことで、各所への対応がかえってスムーズに動き出したようです。
こういった熱意が前作TVアニメのディスクによるソフト化までは筆者も想定していましたが、それが新作TVアニメ化という予想外のことまで引き起こしました。もちろん、この奇跡的な出来事はファンの熱気があってのことです。なぜならば企業も作品をタダでは提供できません。『ダイの大冒険』を今やっても資金が回収できるという判断ができるほど、一定数のファン層が計算できるからゆえの復活でした。
そのため通常ならありえない最初から2年のTV放送で、100話製作というハードルの高いことが実現したわけです。そして、そのファンの気持ちに応えるため、アニメスタッフも現段階で最高と思える『ダイの大冒険』を制作しました。前述した設定の先取りを組み込んだ序盤の展開は、まさにその気持ちの表れだったと思います。
この熱意はアニメスタッフだけでなく、新たにキー局となったテレビ東京にもありました。2022年春にあった東映アニメーションへの不正アクセス事件で放送が延期されたことがあります。この時、誰しもが『ダイの大冒険』が本来の予定よりも話数を削られてしまうことを恐れたことでしょう。
しかし、テレビ東京は番組改編期を無視して、放送できなかった話数分の延長という英断をしました。視聴者からすれば当たり前と思うかもしれませんが、そんな簡単なものではありません。事実、現在は土曜朝の時間帯はアニメ番組を30分前倒しで放送し、穴埋め番組で新番組のない状態になっています。
こういった各方面の熱意が『ダイの大冒険』を名作として完結させました。『ダイの大冒険』は今後もあるだろう、人気作品の再アニメ化の成功例として長く語られることでしょう。
(加々美利治)