アニメにおける「キャラクターソング」性質の変化 『マクロス』『ハルヒ』を転機に現在は?
キャラクターソングはメインコンテンツへと変化した

この時代はゲームにもキャラソンが登場するようになっていますが、代表例としてまず思い浮かぶのは『サクラ大戦』でしょう。田中公平氏が作曲を担当し、真宮寺さくら(CV:横山智佐)と帝国歌劇団のメンバーが歌い上げるオープニングテーマ「檄!帝国華撃団」の美しい旋律と凛々しい歌声は忘れられるものではありません。帝国歌劇団のメンバーは後に舞台へと進出しており、いまの歌って踊る声優たちの先駆けともなりました。
ゲームジャンルであれば、『ときめきメモリアル』も重要な存在です。オープニングと攻略成功時のエンディングを藤崎詩織役の金月真美さん、攻略失敗時のエンディングは上田祐司 (現:うえだゆうじ)さんが担当していますが、初めてゲーム機から歌声が流れてきた時には「ゲームってこんなすごいことができるようになったんだ!」と興奮したものです。他の登場キャラクターの歌も順次CDとして発売されましたが、このような展開をした作品としてはほぼ最初期の例となるでしょう。後に藤崎詩織名義で発売されたシングルCD『教えてMr.Sky』は作詞・森雪之丞氏、作曲・財津和夫氏と希代のヒットメーカーが手掛けており、当時の藤崎詩織、そしてキャラソンの勢いの強さがうかがえます。
そして近年では、キャラソンの重要性はさらに増した……と言うよりも、役割が変化しています。CDの衰退と共に商品として目に見える形で店頭には並ばなくなったため、「最近はキャラソンを見ない」と思われる方もいるかもしれません。しかし実態としては「アイドルマスター」シリーズや「ラブライブ!」シリーズに「アイカツ!」シリーズ、『うたの☆プリンスさまっ♪』に『あんさんぶるスターズ!』など、歌そのものをメインコンテンツとして扱う作品が人気を博しており、キャラソンはライブも含めて作品展開における最も重要な存在へと変化したのです。
かつては添え物だったキャラソンが、今は多くの人を熱狂させる存在となったのは、「歌」というものが、人の心にいつまでも残る強いインパクトを持つ存在だからかもしれません。作品のストーリーを忘れても、歌だけはずっと覚えているものです。キャラソンに熱狂した世代の方々が、歳を取って施設に入ったとき、同じキャラソンを歌って盛り上がる、そんな時代がいつか来るのかもしれません。
(早川清一朗)