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松本零士作品がもたらした「アニメの常識」とは 今じゃ当たり前で気づかない?

松本零士作品の最高峰となった『銀河鉄道999』

1979年の映画『銀河鉄道999 (The Galaxy Express 999)』をリマスターした、「銀河鉄道999 4Kリマスター版 4K ULTRA HD Blu-ray」(東映)
1979年の映画『銀河鉄道999 (The Galaxy Express 999)』をリマスターした、「銀河鉄道999 4Kリマスター版 4K ULTRA HD Blu-ray」(東映)

 こういった経緯から第1次アニメブームは、イコールで松本零士ブームだったとも言えるわけです。この松本零士ブームの頂点となった作品が、劇場版『銀河鉄道999 (The Galaxy Express 999)』(1979年)でした。

 実はこの『999』は前述の『ハーロック』と同じく、もともとアニメ企画として松本先生が提案していましたが、諸事情からマンガ連載が先になったという経緯があります。

 また、この劇場版『999』が異例だったのが、マンガやTVアニメがまだともに進行中だったにも関わらず、映画ではラストエピソードまで描いたことでした。これには松本先生のオチよりも途中の旅の方が重要という考えがあったそうです。この英断により、異例だった劇場版で完結まで見せるということになりました。

 興行成績は1979年邦画配給収入1位というアニメ映画史上初の快挙を成し遂げ、ゴダイゴの歌う主題歌「銀河鉄道999(The Galaxy Express 999)」が当時の人気音楽番組「ザ・ベストテン」でアニメ作品としては初の1位を記録するといった快挙を成し遂げます。

 しかし、ブームというものは常に終わりがあるもの。この後も松本零士作品はアニメ化されていきますが、この時ほどの熱狂は起きることがありませんでした。松本先生は静かに世代交代するかのように、アニメ界の中心から身を引きます。

 ところが、この時にまいた種が芽吹く時がやって来ました。松本零士作品で育った世代が表舞台に立つようになったことがきっかけです。松本先生にあこがれてクリエイターになった人は多く、そういった層によるリバイバルブームとも言うべき現象が散発的に起きました。

 また、ブームになったことで知名度を上げた作品群は、後の世代の目にも届くようになって、新たなファン層の拡大へとつながります。さらに海外での評価は地域によっては日本以上の熱狂ぶりを生んで、松本先生の残した作品群は世界的な知名度を持つに至りました。

 よく松本先生の作品で「男のロマン」に注目が集まりますが、筆者的には人生哲学のような人間の生き方が根底にあると感じています。それは宇宙空間から四畳半まで場所を選ばず、ハーロックのようなカッコいい男でも星野鉄郎のような未熟な少年を通してでも描かれていく生き方の指針となるようなもの。時にはメーテルやエメラルダスも持ち合わせているのですから、男だけのものではないでしょう。

 松本先生の描いてきたキャラクターを通して、我々は大切なことは何なのかを教えてもらっていたと思います。これまで心に響く多くの作品を残していただき、松本先生、本当にありがとうございました。

 最後に完全な余談ですが、筆者が松本先生の絵でもっとも目を奪われたのは「零士メーター」と呼ばれるメカ群でも、長髪で切れ長の瞳にスレンダーな姿の松本美女でもなく、ひたすら美味しそうに描かれたタマゴの入ったラーメンや、バターののったビフテキです。あの実写を超える美味しそうな食べ物の数々。魅力的な日常感覚のある、そんな松本先生の作品がとても好きでした。

(加々美利治)

【画像】『ヤマト』『999』だけじゃない、松本零士が描いた人間ドラマ(5枚)

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