かつて『ドラクエ3』発売で子供たちを悩ませた、「抱き合わせ販売」の不条理
「抱き合わせ」がもたらした幸運

とにかくその時は必死でした。
「クラスメイトがこぞってプレイする大人気ゲームを入手できなければ、クラスでひとりぼっちになる!」
確かそんな言い訳で、母親にお金を出してもらってどうにか『ドラクエIII』を購入できるようになった段階で、決めなければいけないことがあると気づきました。
それは『ドラクエIII』と一緒に、どのカセットを買うのか? という問題です。すでに2本セットでパッケージングされているなかから、少しでも面白そうなタイトルを探す、必死の作業が始まりました。
ここまで数年間ファミコンを遊び続けて、本当にどうしようもない、いわゆる「クソゲー」を何度もつかまされています。せっかくお金を出すのだから、少しでも遊べるカセットを選びたい! その願いが天に通じたのでしょうか。筆者は、多くのパッケージの中から、素晴らしい抱き合わせ対象のカセットを見つけ出したのです。それは……『ファイナルファンタジー』でした。
言わずと知れた、『ファイナルファンタジー』シリーズの第一作です。
当時としても人気があり、本来なら抱き合わせ対象になるタイトルではありません。筆者も買いたかったのですが、お金がなくて見送らざるを得なかったタイトルです。パッケージングをした店員さんがゲームにあまり詳しくなかったのか、仕入れすぎて売れ残っていたのかは分かりませんが、人気タイトルを2つ同時に手に入れる大チャンス到来です。一瞬も迷わず「これください!」と店頭で叫んでいました。
もちろんその後はドラクエをたっぷり楽しんだ後、ゆっくりと『ファイナルファンタジー』を遊びまくり、存分に元を取りました。
その後、抱き合わせ商法は携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」でも多くの子供たちを苦しめましたが、『ドラクエIV』が発売される時期には独占禁止法違反とされ、姿を消しました。
今となっては楽しい思い出ですが、あのころは本当に大変でした……。
(早川清一朗)