かつて『ドラクエ3』発売で子供たちを悩ませた、「抱き合わせ販売」の不条理
かつて1000本以上のタイトルが発売されたファミリーコンピュータでは、人気のあるタイトルを販売する際に、売れ残りのタイトルをセットで売りつける「抱き合わせ販売」が問題となりました。自身も「抱き合わせ」でソフトを購入した経験があるライター、早川清一朗さんが当時の思い出を振り返ります。
欲しくもないカセットに、なけなしの小遣いから何千円も…

「ごめんね? 2本セットじゃないと売れないのよ」
そう言って、済まなそうな顔をするおもちゃ屋のおばちゃんの顔には目もくれず、当時の筆者は目の前にある、他のカセットと一緒にパッケージングされた『ドラゴンクエストIII』(以下ドラクエIII)を呆然と眺めていました。
これが、当時の小学生を苦しめた「抱き合わせ販売」です。ファミコンは約1050本のタイトルが発売されていましたが、カセットはお店側の買いきりで返品はできないので、売らなければ在庫になってしまいます。
インターネットもない時代、おもちゃ屋さんがゲームの情報を入手する手段もほとんどなく、うっかり仕入れすぎたカセットは店頭に並べられ続けていました。古いおもちゃ屋さんになると、今でも当時の在庫が残っているそうです。なんとか在庫を処分したいという気持ちから、人気タイトルと不人気タイトルをセットで販売するアイデアが生み出され、爆発的に普及してしまったのです。
そんなおもちゃ屋さんの事情は今だからこそ分かりますが、小学生のころは当然知りません。整理券を握りしめ、「また来ます」と言ってすごすごと引き返すしかありませんでした。
正直な話をすると、膨大な数のゲームのすべてを小学生の小遣いでまかなえるわけもありません。欲しいカセットを買えずに購入を見送ることなどしょっちゅうでした。それでもこのときは事情が違いました。
なんといっても、当時爆発的人気を誇り、令和の時代までシリーズが継続している『ドラゴンクエスト』の第3作です。「週刊少年ジャンプ」でも毎週のように特集が組まれ、ゲーム少年たちは「絶対に買う!」と心に決め、お年玉を貯めて販売日を心待ちにしていたのです。
ようやく迎えた販売日、おもちゃ屋に列を作った挙句がこの仕打ち。世の理不尽によって、強烈にぶん殴られたような気分になりました。
足りない額は5000円くらい。どうしよう……と、とぼとぼと家路についたのをよく覚えています。