【ボードゲーム人生相談】大切なコレクションを失った悲しみから、立ち直る方法とは?
山形県の古刹で住職を務め、ボードゲームジャーナリストとしても活動する小野卓也さんが、相談者の「お悩み」に答えます。最後はおすすめのボードゲームで気持ちも前向きに!?
「愛着」の深さが悲しみの深さとなる

禅寺の住職であり、ボードゲームジャーナリストでもある小野卓也さんが、さまざまな「お悩み」の相談に答えます。今回のお悩みは……
大切なコレクションを妻に捨てられてしまいました(東京都・38歳男性・会社員)
長年大切にしてきた特撮の映像ソフトやグッズのコレクションを、妻に無断で処分されてしまいました。妻は結婚当時から私の特撮趣味を理解してくれず、「片付けて」と繰り返し言われてきました。自宅が手狭で引っ越しもすぐには難しいため、妻の言い分も理解はできるのですが、まさか無断で処分されるとは……。
思い出が詰まったコレクションを失い、怒りどころか生きる気力すら湧いてきません。妻とはどう接していいのか分からず、ずっと口をきいていません。私はどうすれば立ち直ることができ、どうすれば妻を許せるようになるでしょうか?(38歳男性)
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このような悲劇は、ボードゲーム愛好者でもあるあるですね。「収納棚からはみ出さないようにする、はみ出したものは手放す」という家族との約束なのに、欲しいものは次から次へと出てくるし、持っているものの中にはレアになってプレミア価格がつくものもあるしで、気がつけば自己増殖しているんじゃないかと思うくらい増えていきます。やがて家族の許容できる限界を超えてしまい……。
家族にとっては無価値でも、自分にとっては生命の次に大事な宝物。それを処分されてしまっては、「生きる気力すら湧いてこない」とおっしゃるのも決して大げさではないだろうとお察しします。いくつかは手間とお金をかければ買い直せるかもしれませんが、それはもはや思い出が詰まったコレクションではありません。
奥様が実力行使に出られたのはよほどの事情があってのことで、そちらのケアも大切だとは思いますが、それはさておき、今回はこの「大事なものを失って悲しい」という気持ちに正面から向き合ってみたいと思います。
この気持ちを抑え込んでいては、かえって立ち直りが遅くなってしまい、いつまでも奥様を許せなくなってしまうでしょう。
そもそも悲しみとは、〈無いこと〉に注意が向いている状態です。しかし〈最初から無いもの〉であれば、無いと意識されることはありません。家には、言われてみれば無いものはたくさんあるでしょうが、それが無いことは問題になりません。〈あるはずななのに(あったのに)無いこと〉が悲しいわけです。
しかも、〈ただあっただけのもの〉は、無くなっても悲しくありません。むしろ無くなってすっきりしたと思うでしょう。おそらく奥様にとってのコレクションが、〈ただあっただけのもの〉だろうと思います。