ラグビーW杯開催の今こそ読みたい、漫画『1・2の三四郎』のラグビー愛
格闘世界に挑むも、主人公の根底には「ラグビー」が

『1・2の三四郎』の物語は、ラグビー部を辞めた三四郎が柔道部に入り、ひょんな経緯からレスリング部の西上馬之助、空手部の南小路虎吉とひとつの道場をプロレスのリングロープで三等分に折半した「格闘部」を設立。マネージャーであり、後に三四郎のヨメとなる北条志乃を交えた青春ドタバタ劇なのですが、全20巻のうち1~4巻までは学園祭を舞台に、飛鳥純率いるラグビー部との対戦がメインとなっています。
まぁ、この『1・2の三四郎』のラグビーの試合も、格闘部メンバーのひとりである岩清水健太郎による、殺虫剤や虫取りの網を使った反則などがあるのですが、それでも『男塾』よりは現実的な世界観です。
加えて『三四郎』の劇中ではアントニオ猪木やジャイアント馬場、ベニー・ユキーデにそっくりな「女学生」が登場したり、アントニオ猪木本人が物語のなかでチョイチョイと登場したりするのですが、こうした部分もフィクションとノンフィクションを巧みに織り交ぜる手法を確立した梶原一騎先生から続く、「週刊少年マガジン」イズムを感じさせるものとなっています。岩清水の「君のためなら死ねる」というセリフも、梶原一騎先生の代表作の一つである『愛と誠』へのオマージュです。
ちなみに『1・2の三四郎』の物語は、柔道部編、プロレスラー編へと続いていくのですが、柔道部編での黒崎高校、柳政紀との対戦で一本を決めたのもラグビー・タックルです。プロレス編のラストである「TWWAベルト争奪タッグトーナメント」決勝戦の相手であるシュガーレイ・オズマとスティーブ・ノーランの2m超えコンビも、元ラグビー選手という設定です。もちろん、主人公の東三四郎のバックボーンは、あくまでも柔道ではなくラグビーとなっています。
筆者もドラマ『ノーサイドゲーム』でフォワードとバックスのポジションの違いや、モールやドロップゴール、ノックオンなどの用語を覚えた“ニワカ”ですが、そうしたことを知った上で再び『1・2の三四郎』を読んでみると、新たな発見がありました。
日本代表の決勝進出も濃厚となったラグビーW杯で高まった「熱」と、少し増えたラグビーに対する「知識」をもって、再び昭和のマンガを読み返してみるのもオツな楽しみではないでしょうか?
(渡辺まこと)