『北斗の拳』ケンシロウが最後に倒した敵って誰だった? …ヤツの名前を言ってみろ!
ラストエピソードは1話のリバイバル

記憶を失い黒王号とも別れたケンシロウは、またもや「み、水を…」と脱水症状でバットとリンの前に現れます。これはまったく1話と同じ展開です。ケンシロウの記憶がないことを知ったバットは、ふたりが白紙からやり直すチャンスだと考えました。
しかしそこにボルゲが現れます。ボルゲこそケンシロウが最後に倒した「名前のある悪役」ですが、実は単なるならず者にすぎません。サウザーやラオウ、カイオウと比べるとあまりにも格下であり、モブキャラに毛が生えた程度の存在感です。
ボルゲは、かつてケンシロウに視力を奪われており、その復讐をしようと徒党を組んで暴虐行為を繰り返します。一方で、記憶を失ったケンシロウは北斗神拳を使えません。そこでバットはケンシロウに代わってボルゲと戦いますが、敗北し拷問を受けます。
苦痛の声を上げたら自分がケンシロウでないことがバレると考えたバットは、ドリルでえぐられても超人的な精神力で耐え、ケンシロウとリンの幸せを願います。ケンシロウの強さと優しさに憧れ、いつも心の中でアニキと叫んでいた、というバットのモノローグはあまりにも尊い感情です。
しかしそこに記憶を失ったふたりが現れました。戦えない身でバットをかばうケンシロウですが、バットの叫びによって記憶を取り戻し、ボルゲに北斗神拳を炸裂させます。第1話ではリンの叫びで拳を振るったケンシロウが、最終エピソードではバットの叫びで復活するのです。そしてリンもまた記憶を取り戻し、常に側にいてくれたバットの愛情に気づきました。
●リンの愛、バットの愛、ケンシロウの愛
『北斗の拳』という超大作の最後の敵であるにもかかわらず、ボルゲの印象が薄かったのは、3人がお互いに向け合う愛のエピソードを描くための舞台装置として配置されていたからでしょう。年上の男性に向ける少女の愛、頼れるアニキに向ける敬愛と自己犠牲の愛、自分を慕う若者を守る年長者の愛、愛こそが不毛の荒野で人間らしく生きるために必要なものです。
ラストエピソードは第1話との完璧な対比になっており、初掲載から数十年を経た今でも全く古びていません。作品から伝わってくる圧倒的な感情の強さこそ『北斗の拳』を不朽の名作にしているのでしょう。
(C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983
(レトロ@長谷部 耕平)




