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アニメの企画プロデューサーには、どんな「夢」がある? ジェンコ・中尾幸彦氏に聞く

メディア多様化時代の「アニメの未来」

インタビューに応える、中尾幸彦プロデューサー(マグミクス編集部撮影)
インタビューに応える、中尾幸彦プロデューサー(マグミクス編集部撮影)

――企画プロデューサーとして、将来の夢や野望のようなものはお持ちでしょうか?

中尾 もちろん、持っています。いつの日か、双方向性を持つ群像劇のような作品をつくってみたいですね。3DCGを上手く活用すれば、実は可能かもしれないと考えています。

――かつてヒットした、「やるドラ」のようなものでしょうか? アニメとアドベンチャーゲームが融合した……。

中尾 いえ、物語のルート分岐にとどまらない、より進んだ形をイメージしています。メディアが多様化した昨今、内容の良し悪しに関わらず、スタートからゴールまで一直線に進行するお話を最後まで見てもらうことが、本当に難しくなっています。その反面、登場人物が多種多様なほど、それぞれに深い思い入れを抱く「キャラ愛」の傾向は強くなっている。主人公には一切興味がなく、脇役だけを愛してどこまでも追いかけたい、そんなお客さんがたくさんいるのです。

 それなら、「どのキャラクターを主人公に選んで」、「どの話数から視聴を始めても」成立する作品であれば、誰のどんなキャラ愛だってすくい上げることができるんじゃないか……まだぼんやりとしていますが、それが僕の構想です。未来のアニメは、そんな形になっているのかもしれません。

中尾さんが企画を手掛けた、TVアニメ『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』(2019年)。1996年に発売され、各機種に移植されたアドベンチャーゲームが原作 (C)MAGES./PROJECT YU-NO
中尾さんが企画を手掛けた、TVアニメ『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』(2019年)。1996年に発売され、各機種に移植されたアドベンチャーゲームが原作 (C)MAGES./PROJECT YU-NO

――すごく野心的な構想ですね。

中尾 TVアニメ『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』を立ち上げた時も、この構想は頭の片隅にありました。あの原作を考え得るベストの形で映像化できたのは、構想を形にする第一歩になってほしいという想いと、ゲームをやり込んでいた平川哲生監督の存在があったからでしょう。もともと、平川監督くらい原作を熟知している方が見つからなければ、企画は成立しないと思っていましたから。

――最後に、アニメを愛する読者の皆さんに、メッセージをお願いします。

中尾 ひとりで自主アニメを制作し、ジェンコに送ってこられる方が多数いらっしゃいますが、私は届けられた作品をすべて見ています。商業アニメには商業アニメの事情があり、直接仕事を発注するといったことはなかなかできないのですが、内容はハイレベルで意欲的なものばかりです。将来、日本のアニメを牽引するクリエイターになる方も、なかにはいらっしゃるはずです。その時はぜひ、お仕事をご一緒させてもらえると光栄です。

(取材/構成:香椎 葉平)

●中尾幸彦(なかお・ゆきひこ)
studioぴえろにて制作進行を務めた後、東映アニメーションで『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』『ドラゴンボール超』『美少女戦士セーラームーンCrystal』など多数の作品の演出を手掛ける。現在はジェンコに所属し、プロデューサーとして『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』『放課後さいころ倶楽部』などの企画を手掛けている。
Twitter:@nanokayuki

【画像】「未来のアニメ」への布石? 中尾プロデューサーが手掛けた『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』

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