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『宇宙刑事シャイダー』がパンチラアクション満載になった理由 「女刑事アニー」の役割とは

『宇宙刑事シャイダー』のヒロインである女刑事アニーは、ミニスカをものともせず男性顔負けのアクションでファンを魅了しました。「メタルヒーロー」シリーズはアニーのパンチラで新たなファン層を獲得します。硬派なイメージのある「宇宙刑事」シリーズになぜそのような要素が加わったのでしょうか?

女刑事がアクション担当になった「背景」

ウエスタン風ミニスカ衣装のアニーがジャケットに描かれる、「宇宙刑事シャイダーDVD.vol6」(東映)
ウエスタン風ミニスカ衣装のアニーがジャケットに描かれる、「宇宙刑事シャイダーDVD.vol6」(東映)

 1984年に放送された『宇宙刑事シャイダー』は、宇宙刑事シリーズの第3弾で最終作です。宇宙刑事シリーズは主演俳優がスタントなしで行う迫力のアクションと、当時最新鋭の特撮やメカニックの融合が魅力でした。そんなシャイダーでは新たに、主人公の相棒「アニー」のパンチラアクションが加わり、番組に欠かせない要素となりました。

 アニーのパンチラアクションが番組のウリになったのは、キャスティングに事情がありました。前2作の『宇宙刑事ギャバン』の主演・大葉健二さん、『宇宙刑事シャリバン』の主演・渡洋史さんはいずれもJAC(ジャパンアクションクラブ)に所属する俳優でした。JACは人気俳優・新田真剣佑さんと眞栄田郷敦さんの父である故・千葉真一さんが世界に通用するアクションスターやスタントマンを養成するために創設した組織です。
 俳優とスーツアクターが分業している現代では考えられませんが、JAC俳優は危険なアクションも全てノースタントで行います。

『人造人間キカイダー』からのスーツアクターを経て、『バトルフィーバーJ』のバトルケニア、『デンジマン』のデンジブルーを演じた大葉健二さんは『ギャバン』では初めて主演の座を射止めました。

『シャリバン』の渡洋史さんは弱冠19歳で主役に抜擢。しかし、すでにギャバンのスーツアクターや時代劇で千葉さんのスタントを経験し、実績は十分でした。ふたりとも、変身に至るまでのアクションシーンはお手のものでした。

 ところが、3作目のシャイダー役に抜擢された円谷浩さんは、危険なアクションは不可能でした(名前で想像がつくかもしれませんが、ウルトラシリーズを手がける円谷プロの御曹司でした)。そこで、JAC出身の森永奈緒美さんが女刑事アニーとなり、アクション要素を任されたのです。

 それまで、ギャバンの相棒のミミー、シャリバンの相棒リリィはそれぞれ母艦にいて後方支援するポジションでしたが、アニーは積極的に地上に降りて敵勢力である「不思議界フーマ」と戦います。地面を転がりながら敵の攻撃をかわし、レーザーセンサーガンで迎え撃つのです。ウェスタン調のコスチュームは超ミニスカートで、回転する度チラッと見える白いものに男性視聴者の視線が集まりました。こうした要素もあって、番組は新たな視聴者を増やしていきました。

 もちろんパンチラだけでなく、本格的なアクションもギャバン・シャリバンに負けないくらいこなしていました。森永さんは『宇宙刑事シャイダー』Blu-ray BOX1の特典映像のなかで、奥多摩の吊り橋の下をロープ1本で渡ったり、小学校の校舎から飛び降りたりと、激しいアクションで生傷が絶えなかったことを明かしています。

『ギャバン』の「宇宙犯罪組織マクー」、『シャリバン』の「宇宙犯罪組織マドー」といった敵の犯罪組織は、ストレートに地球を破壊し支配するのが目的でした。しかし『シャイダー』の「不思議界フーマ」の戦略をつかさどる神官ポーは、地球を美しい状態で手に入れるため、人びとの心を支配する不思議獣を送り込みました。

 アニーとシャイダーはふたりとも宇宙刑事訓練養成所の訓練生で、半人前のまま、緊急のため地球に赴任したという設定です。お互いに未熟な部分を補いながら成長していきました。アニーはシャイダーの相棒という枠を超えて、もうひとりの主役ともいうべき活躍を見せたのです。

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