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特撮世界にもあった「忠臣蔵」? 怪獣やスーパー戦隊に取り入れられた絶妙さ

時代を超えたカンフー忠臣蔵、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』

『獣拳戦隊ゲキレンジャー』DVD9巻(東映)。第33話「フレフレガッチリ!カンフー忠臣蔵」を収録
『獣拳戦隊ゲキレンジャー』DVD9巻(東映)。第33話「フレフレガッチリ!カンフー忠臣蔵」を収録

 次に紹介するのが、スーパー戦隊シリーズの第31作『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(2008年~2009年)です。本作の第33話のサブタイトルは「フレフレガッチリ!カンフー忠臣蔵」(脚本:荒川稔久・監督:中澤祥次郎)。

 この回は、元禄時代に飛ばされてしまったゲキレンジャーたちが吉良上野介に憑依した敵・臨獣アングラーフィッシュ拳のムコウアを倒すというストーリーです。『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003年~2004年)以降恒例となっていたスーパー戦隊シリーズの京都ロケ回で、東映京都撮影所をフルに活用した一編となっています。

『ゲキレンジャー』はカンフーをモチーフとする戦隊です。吉良邸へ討ち入った当初、ゲキレンジャーは刀で戦っていましたが、刀の扱いに不慣れなため途中から彼らが得意とするカンフーで戦います。ゲキレンジャーと戦う吉良家の家臣・清水一学を“日本一の斬られ役”として知られる俳優の福本清三氏が演じており、見事な剣さばきを披露しています。余談ですが、福本氏は映画『最後の忠臣蔵』(2010年)で吉良上野介を演じていました。

「忠臣蔵」を知らない子供たちへの配慮からか、宇崎ラン/ゲキイエローが漢堂ジャン/ゲキレッドに忠臣蔵の顛末を説明する描写が挿入されるのも本作の特徴です。ジャンは「虎に育てられた野生児」という人物設定だったため、自然な流れで「忠臣蔵」の説明が行われています。

 巨大ロボ戦も「忠臣蔵」を意識したものとなっています。ムコウアがゲキレンジャーを「田舎侍」と罵ったり、巨大ロボ・ゲキリントージャがムコウアを攻撃したのが額と肩で、浅野内匠頭が吉良を斬りつけたのと同じ箇所だったりと、「忠臣蔵」のエッセンスを随所に折り込んでいることがわかります。

『怪獣総進撃』はゴジラシリーズの世界の中へ、「忠臣蔵」の要素を解体して取り込んだ作品となっている一方、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』は作品の持ち味を活かしながら、タイムスリップと東映京都撮影所というふたつの切り札を用いて「忠臣蔵」の世界の中へと入り込む作りをしていました。どちらも「忠臣蔵」を題材にしていますが、作りが全く違うため、それぞれユニークな“特撮忠臣蔵”を楽しむことができます。

(森谷秀)

【画像】時代劇からアニメまで、いろいろ作られた「忠臣蔵」映像作品(6枚)

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