マグミクス | manga * anime * game

『ドラえもん』50周年に読みたい、連載当時の「まいっちんぐ」な裏事情

「しずかちゃんはお風呂好き」の設定に関わったのも…

えびはら武司『藤子スタジオアシスタント日記 まいっちんぐマンガ道 ドラえもん達との思い出編』(竹書房)
えびはら武司『藤子スタジオアシスタント日記 まいっちんぐマンガ道 ドラえもん達との思い出編』(竹書房)

『ドラえもん』連載当時のことを描いた『藤子スタジオアシスタント日記 まいっちんぐマンガ道 ドラえもん達との思い出編』は、「藤子スタジオアシスタント日記 まいっちんぐマンガ道」シリーズの3作目にあたりますが、あまり公に語られることのない『ドラえもん』や諸作品の事情も描かれています。

 たとえば、てんとう虫コミックス『ドラえもん』1巻のカバー絵が元絵とはかけ離れた色合いで印刷されていることや、藤子・F・不二雄先生が読んでいたロバート・A・ハインラインのSF小説『夏への扉』が、実は『ドラえもん』の元ネタではないか……といった推測などは、当時の現場や生の藤子・F・不二雄先生を知る人だからこそ描けるエピソードでしょう。

 何より衝撃的だったのは、しずかちゃんの裸をえびはら武司先生が描いていたことでした。いまとなっては定説の、「しずかちゃんはお風呂好き」設定ですが、これは『ハレンチ学園』など当時のお色気マンガブームを受け、連載2年目に取り入れたものだそうです(子供が楽しめるものを第一とする藤子・F・不二雄先生は、あまり乗り気でなかったようですが……)。

 この頃の『ドラえもん』執筆の段取りは、まず全体的な下描きとキャラクターの顔の部分のペン入れを藤子・F・不二雄先生が担当。キャラクターの体の部分は、藤子スタジオのチーフアシスタントだった方倉陽二先生がペン入れを担当していました。

 しかし、方倉チーフの出社が遅れた時、しずかちゃんのお風呂のシーンの下書きを見つけたえびはら先生は、ついその体にペン入れしてしまいました。その後もスキを見ては何度か方倉チーフを差し置いて、しずかちゃんの裸を描いたそうです。

 後に独立したえびはら武司先生は、藤子・F・不二雄先生が積極的に描かなかったお色気路線に独自性を見出し、『まいっちんぐマチコ先生』を連載開始します。80年代に十代を過ごした人であれば、一度はしずかちゃんとマチコ先生で胸をときめかせたことがあると思いますが、どちらもえびはら武司先生の手によるものとわかった時の衝撃は、本当にまいっちんぐでした。

「藤子スタジオアシスタント日記 まいっちんぐマンガ道」シリーズで、藤子・F・不二雄先生と藤子不二雄A先生、それに藤子スタジオの個性豊かな面々が織り成すエピソードの数々は、名作のメイキングという面だけでなく、マンガに夢をかけた青春群像としても楽しめる内容となっています。

(倉田雅弘)

【画像】懐かしすぎ!『まいっちんぐマチコ先生』の定番シーン(7枚)

画像ギャラリー

1 2