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ヤツはとんでもないものを…『カリオストロの城』にも影響を与えた、三島由紀夫の凄さ

特撮ドラマにも影響を与えた三島由紀夫

『ウルトラセブン HDリマスター版』 (C)円谷プロ
『ウルトラセブン HDリマスター版』 (C)円谷プロ

 三島文学は特撮ドラマにも影響を与えています。一時期の三島由紀夫は空飛ぶ円盤の観測に熱中し、瑤子夫人と共に葉巻型UFOを目撃しています。そんな体験をもとに執筆されたのが、1962年に発表されたSF小説『美しい星』でした。東京の郊外で暮らす重一郎たち一家が自分らは宇宙人であることに目覚め、地球を滅亡から守ろうとする物語です。

 小説『美しい星』のクライマックス、重一郎は「白鳥座」からやって来た非友好的な宇宙人たちと自宅の応接間でディベートすることになります。テーマは「人類は存続させるに値するか」です。核兵器の実験を繰り返す人類を、「白鳥座」から来た宇宙人たちは愚かな存在とみなし、人類そのものを消し去ろうとします。重一郎は人類の美徳を挙げ、懸命に反論するのです。特撮ドラマ好きな人なら、あの名作のあのシーンが思い浮かぶのではないでしょうか。

 1968年にテレビ放映された『ウルトラセブン』(TBS系)の第8話「狙われた街」では、ウルトラセブンことモロボシダンは、地球侵略を企むメトロン星人とアパートの一室で、ちゃぶ台を挟んで語り合うシーンがあります。「狙われた街」は金城哲夫(脚本)と実相寺昭雄(監督)とがタッグを組んだ異色作として有名です。

『美しい星』は、リリー・フランキー、亀梨和也、橋本愛、佐々木蔵之介ら人気キャストによって2017年に実写映画化されています。『桐島、部活やめるってよ』(2012年)などのヒット作を放った吉田大八監督は、公開時のインタビューでこう語っています。

「実相寺監督や『狙われた街』の脚本を書いた金城哲夫さん、佐々木守さん……。特撮ドラマに関わっていた当時のクリエイターたちはみんな読んでいたんじゃないでしょうか。実は『美しい星』は原作が発表されてすぐに一度テレビドラマ化もされているんですが、脚本があの田村孟さん、監督が『帰ってきたウルトラマン』の真船禎さんです。当時の最先端を行くクリエイターたちの琴線に触れる作品だったんだと思います」

朝ドラ『あまちゃん』とも関係あり?

映画『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』より (C)2020 映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会
映画『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』より (C)2020 映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会

 クドカンこと宮藤官九郎脚本によるNHK連続テレビ小説『あまちゃん』も、三島由紀夫の影響を受けた作品です。『あまちゃん』の主人公・アキ(のん)が親友のユイ(橋本愛)とデュエットする劇中歌「潮騒のメモリー」は、三島由紀夫の小説『潮騒』がモチーフとなっています。『潮騒』はたびたび映画化され、吉永小百合、山口百恵、堀ちえみ、といったアイドル女優たちが海女役を演じてきました。『あまちゃん』&「海女」ブームのルーツは、三島文学だったのです。

 三島由紀夫は自衛隊市谷駐屯地で割腹自殺を遂げるという、あまりにもセンセーショナルな人生の幕引きを自作自演してみせました。そのため「近寄り難い天才」というイメージがありますが、ドキュメンタリー映画『三島由紀夫VS東大全共闘』では、魅力的な一面を見せています。東大全共闘という、怖いもの知らずの若き論客たちを相手に、予定調和なしのディベートを全力で楽しんでいる様子が映像から伝わってきます。また、この討論会の司会を務めた東大生・木村修さんのことを気に入り、自ら創設した民兵組織「楯の会」に誘います。このときの電話でのやりとりも映画のなかで明かされ、三島由紀夫がとても人間味のある人物であったことが分かります。

 黒蜥蜴と同様にいくつもの顔を持っていた三島由紀夫ですが、その素顔は人間の心の美しさをこよなく愛する大変なロマンティストだったようです。

『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』
監督/豊島圭介 企画プロデュース/平野隆 音楽/遠藤浩二
出演/平野啓一郎、内田樹、小熊英二、瀬戸内寂聴ほか
ナビゲーター/東出昌大
配給/ギャガ 3月20日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開
(C)SHINCHOSHA
(C)2020 映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会

【公式】『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』3.20(金)公開/本予告

(長野辰次)

【画像】『カリオストロの城』『ウルトラセブン』に影響を与えた三島由紀夫の姿

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