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知名度上位の怪獣「カネゴン」は『ウルトラマン』に出てこない? 意外と衝撃だった初登場回

ウルトラシリーズの有名怪獣が登場するエピソードで、多くの人が観ているようで観ていないのが「カネゴン」の回です。コメディのようで、悪夢のようでもある名作ですが、どのシリーズの作品だったのでしょうか。

意外と観ていない? 「カネゴン」登場エピソード

「ウルトラアクションフィギュア カネゴン」(BANDAI) (C)円谷プロ
「ウルトラアクションフィギュア カネゴン」(BANDAI) (C)円谷プロ

 ウルトラ怪獣「カネゴン」の知名度は抜群です。あの個性的なビジュアルは、特撮ファンでなくとも、一度は見たことがあることでしょう。

 もちろんファン人気も高く、NHK BSプレミアムで企画された『発表!全ウルトラマン大投票』の「ウルトラ怪獣」部門では、「レッドキング」「メフィラス星人」「ツインテール」などのスター怪獣、宇宙人をおさえて14位にランクインしています。このランキングの上位には、平成以降の怪獣たちも多く入っていることを踏まえれば、カネゴンが昭和世代を代表するウルトラ怪獣であることは間違いありません。

 ところで、カネゴンが出てくるエピソードを、観たことがある方はどれくらいいるのでしょうか? この質問を、「子供の頃はウルトラシリーズをよく観ていた」という方にすると案外、答えに詰まるかもしれません。何せカネゴンは、『ウルトラマン』にも『ウルトラセブン』にも登場していないのです。

 ファンからすれば大前提の話ではありますが、カネゴンが登場するのは『ウルトラマン』の前番組『ウルトラQ』の、第15話「カネゴンの繭」というエピソードでした。彼は「バルタン星人」や、「ゴモラ」よりも先輩です。

 筆者を含む「非リアルタイム」世代の多くがそうであるように、基本的にウルトラシリーズはVHSか、「再放送」で視聴していました。ことVHSとなると、子供としては『ウルトラQ』より、ヒーローが出てくる『ウルトラマン』を選んでしまいます。そのため、カネゴンは怪獣図鑑などでの知識のみが蓄積され、知らぬ間に「観たつもり」になっている、なんてこともしばしばです。少なくとも、筆者の場合はそうでした)

 改めて『ウルトラQ』第15話「カネゴンの繭」を確認しましょう。あらすじとしては……お金を集めることが大好きな「金男少年」が、小銭の音がするカネゴンの繭に取り込まれ、お金を食べる怪獣カネゴン」に変身してしまってさあ大変! というコメディタッチの物語です。

 不気味なエピソードも多い『ウルトラQ』ですが、このエピソードは明るく、ユーモラスな雰囲気でした。お金を食べないと生きていけないカネゴンと、それを必死でお世話してあげている友達の構図は一見、微笑ましいものですが、さすがは『ウルトラQ』だけあって、ところどころで淡い「悪夢」のテイストを感じるのもまた、このエピソードの魅力です。

 たとえば、カネゴンへの変身(変態)シーンは、極めて「前衛」的です。繭に取り込まれた瞬間に壁が溶けて地平線が出現し、その上から、極度に抽象化、解体された「人体」のようなオブジェクトがぶら下がり、消えていきました。繭のなかで肉体が再構築される過程の表現とは思われますが、突如挿入されるこの演出は、なぜか何度も観たくなる中毒性があります。

 また、カネゴンは常にお金を食べていないといけません。最初は友達もなけなしのお小遣いを差し出してくれますが、お小遣いがなくなってしまえば、平気で「サーカスに売り飛ばそう」などと計画を実行しようとします。この倫理観の希薄さが、妙にリアルなのです。

 ほかにも、荒屋に住む実に怪しげな祈祷師のお婆さんに、助けを乞うシーンもあります。この場面はカネゴンすらおらず、ただ祈祷師のお婆さんが呪いの言葉を唱えながら、画面いっぱいに暴れ回ります。悪夢以外の何ものでもありません。

 そしてラストはいかにもな「オチ」がつき、「カネゴンの繭」は幕を閉じます。想像していたよりも遥かに、映像的な衝撃が待ち受けている名エピソードでした。

 さて、円谷怪獣にはカネゴンのエピソードから派生した、マスコット的な怪(快)獣の「ブースカ」がいます。彼も存在は知っていても、エピソードは観ていない方が多そうな怪獣ですが、長くなるのでこちらに関してはまた別記事に譲らねばなりません。

(片野)

【画像】え…っ? モノクロだと印象変わるな… こちらが放送当時のなんか不憫なカネゴンです

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