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無名の“宮崎駿”がブレイクした瞬間 『未来少年コナン』で見せた「天才」ぶり

海の男が、思わず口にした「すごい女の子ッ」

アニメ『未来少年コナン』ビジュアル (C)NIPPON ANIMATION CO.,LTD.
アニメ『未来少年コナン』ビジュアル (C)NIPPON ANIMATION CO.,LTD.

 清楚で、大人しそうに見えるラナですが、海を泳いで助けにきてくれたコナンがピンチに陥り、第8話では驚くような行動力を発揮します。ダイス船長によって縛られていたラナは自分の歯でロープを食いちぎり、上陸艇を操縦し、溺れかかっていたコナンを逆に救出するのです。このとき、ダイス船長の部下である水夫のドンゴロス(CV:神山卓三)は、思わず「すごい女の子ッ」とうなります。

 ラナの活躍はそれだけではありません。レプカの命令を受けたガンボートの砲撃を浴び、上陸艇は沈没。拘束具をはめられていたコナンも、海底に沈んでしまいます。この絶体絶命の危機に、ラナは口移しでコナンに空気を与えるのです。コナンとラナとのファーストキスは、とてもスリリングなシチュエーションでした。

 自己犠牲をいとわないラナの献身さに応え、コナンは火事場のクソ力を発揮。ラナを抱き抱えたコナンは、海底から海面へと勢いよく飛び出し、月が輝く夜空にまで飛翔するのです。ふたりの愛の力が、科学や一般常識を凌駕した瞬間でした。

天才アニメーターがブレイクした瞬間

 それまでのアニメーションは横の動きが主流だったのに対し、宮崎監督は高低差を生かしたダイナミックな演出で有名になります。第6話でのラナを抱えたコナンが三角塔から飛び降りたシーンに続く、第8話での月に向かってのコナンの飛翔シーンは、宮崎監督の天才ぶりの発露だといえるでしょう。第8話を観た子供たちは、『未来少年コナン』はこれまでにはなかった特別なアニメーションだと気づくことになったのです。

 コナンの飛翔シーンの後も、素晴らしい場面が第8話には待っています。生死のギリギリの境目をくぐり抜けてきたコナンとラナは、浜辺で目を覚まします。コナンと出会え、生きていることを実感できたラナは、愉快そうに笑います。いつもは、ちょっと影のある雰囲気のラナが屈託なく笑う姿は、とても印象的でした。『新世紀エヴァンゲリオン』(テレビ東京系)の第6話「決戦、第3新東京市」のラストシーンと同じくらい、視聴者の胸に残る名シーンではないでしょうか。

『未来少年コナン』の「行き過ぎた科学への警鐘」というメッセージ性は、劇場アニメ『風の谷のナウシカ』(1984年)へと受け継がれ、冒険活劇としての面白さは『天空の城ラピュタ』(1986年)に凝縮されることになります。天才クリエイターには、それまで蓄えていた才能をいっきに開花してみせる、ブレイクする瞬間があります。その瞬間を視聴者がリアルタイムで目撃したのが、『未来少年コナン』の第7~8話だったのではないでしょうか。

(長野辰次)

※NHK総合では『未来少年コナン』の第1話~6話を一挙再放映します。
2020年6月13日(土)15時5分~16時33分 第1~3話
2020年6月14日(日)15時5分~16時33分 第4~6話

【画像】可愛いだけじゃない「スゴい」女の子ラナ

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