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「どうせウルトラマンが助けに来る」子供の言葉に危機感… 「神回」誕生の舞台裏

「ウルトラマンが消えてからハヤタが戻ってくる、おかしいって気付かないの?」「ウルトラマンはすぐにスペシウム光線を撃てばいいのに」「科特隊って必要?」……それは言っちゃいけません。制作陣の問題意識は、多くのファンに支持されるエピソードを生み出したのです。

科学特捜隊の存在意義に疑問が?

 『ウルトラマン DVD vol.10』(ハピネット・ピクチャーズ)。第37話「小さな英雄」を収録
『ウルトラマン DVD vol.10』(ハピネット・ピクチャーズ)。第37話「小さな英雄」を収録

 現代まで語り継がれる名エピソードの多い『ウルトラマン』のなかでも、全39話のなかで最高視聴率42.8%を記録し、ファンの間で屈指の「神回」と評価されるエピソードがあります。それは、1967年3月に放送された第37話「小さな英雄」です。

 この第37話の主人公は、「科学特捜隊」(以下、科特隊)のイデ隊員でした。

 科特隊はデパートに迷い込んだ「ピグモン」を保護します。ピグモンはしきりに何か話しますが、当然言葉が分かりません。

 数日後、メカニック担当でもあるイデ隊員が、仕事の遅れを仲間から責められます。いつも明るいイデですが最近は元気がありません。イデはハヤタ隊員に悩みを打ち明けます。

「我々、科学特捜隊がどんなに頑張っても、結局、敵を倒すのはいつもウルトラマンだ。僕がどんな新兵器を作っても大抵役に立たんじゃないか。いや、新兵器だけじゃない、我々、科学特捜隊もウルトラマンさえいれば必要ないような気がするんだ」

 ハヤタは「持ちつ持たれつだ」と、イデをねぎらいますが心は晴れないようでした。

 ピグモンの言葉が解読できました。「怪獣『ジェロニモン』の力で60体の怪獣が復活し、総攻撃してくる」というのです。科特隊が、ジェロニモンが潜伏する大岩山へ向かうと、すでに「テレスドン」と「ドラコ」の2体がいました。

 地上戦でハヤタとイデはドラコを攻撃しますが、イデに戦う意欲がありません。

 イデ「ウルトラマンが今に来るさ」
ハヤタ「バカを言え! ウルトラマンは我々が力いっぱい戦ったときだけ力を貸してくれるんだ!」

 ドラコに怯えるイデは「ウルトラマーン!」と叫んで助けを求めます。ハヤタは、ここで変身しても彼のためにならないと思い、一度出したベータカプセルをしまいます。

 そこへ、ピグモンが顔を出しました。ドラコの気を自分に向けさせようと声を上げていると、ドラコに叩き潰されてしまいます。ピグモンは命と引き換えにイデを守ったのです。ハヤタは怒りました。

ハヤタ「イデ! ピグモンでさえ我々人類の平和のために、命を投げ出して戦ってくれたんだぞ! 科特隊の一員としておまえは恥ずかしいと思わんのか!」

 平手打ちをくらったイデは目を覚まします。「僕が間違っていた。くそっ!」。

 イデは、新兵器「スパーク8」を撃ってドラコを倒し、さらに、ウルトラマンがリフトアップしたジェロニモンにも撃ち込んで爆破させました。

 大活躍したイデを「今日の英雄」と称える隊員たち。しかし英雄はもうひとりいました。科特隊はピグモンに黙祷を捧げ、「小さな英雄」として称えるのでした……。

 当時、子供たちから『ウルトラマン』へのツッコミどころはいろいろありました。「最後はウルトラマンがやっつける」「科特隊はいらない」は、当時よく言われたことでした。実は、そのことが名作誕生のきっかけになったのです。

【画像】ウルトラマンに似せた色が良い! これがゴキゲンな科特隊のメカたちです(8枚)

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