『金八先生』視聴者にトラウマ植え付けた健次郎(演:風間俊介) 25年経過も「見ると心臓が…」
武田鉄矢さん主演の『3年B組金八先生』は、昭和から平成にかけて幅広い世代に親しまれてきた名作ドラマです。人によって思い出深いシリーズは異なるものの、第5シリーズに登場した「兼末健次郎(演:風間俊介)」ほど、視聴者を震え上がらせた生徒はいないかもしれません。
「朝の顔」になっても「いまだに怖い」

1979年の放送開始から32年間にわたって続いた『3年B組金八先生』では、シリーズごとにその時代を反映した社会問題が描かれてきました。15歳の母、腐ったミカンの方程式、いじめ、不登校、性同一性障害など、数々のテーマが取り上げられてきましたが、なかでも「学級崩壊」を真正面から描いた第5シリーズは、多くの視聴者にトラウマを残したのではないでしょうか?
本作は、武田鉄矢さん演じる中学教師「坂本金八」が、学校や家庭のさまざまな問題に体当たりで向き合っていく学園ドラマです。全8シリーズに加え、12のスペシャル回が制作されたほか、コミカライズや家庭用ゲームソフトの発売などメディアミックスも盛んに行われ、時代を象徴する作品として幅広く親しまれてきました。
その魅力を語るうえで、個性豊かな3年B組の生徒たちの存在は欠かせません。クラスはシリーズごとに入れ替わり、毎回物語を大きく揺るがすキーパーソンとなる生徒が登場します。例えば第1シリーズでは15歳で妊娠する「浅井雪乃(演:杉田かおる)」、第2シリーズでは3年B組に転校してきた不良少年「加藤優(演:直江喜一)」を中心に、それぞれの時代に応じた問題提起を際立たせてきました。
とりわけ「加藤優」は、転校初日から乱闘騒ぎを起こすような札付きのワルでしたが、自ら問題を起こす分、金八先生も正面から向き合うことができます。ところが第5シリーズでは、問題児の背後に「黒幕」が存在しており、姿の見えない悪に金八先生は悩まされることになるのです。
第5シリーズは、3年B組の前担任「中野先生(演:ラサール石井)」が、生徒たちから集団暴行を受けるというショッキングな事件から幕を開けます。これによりクラスは学級崩壊寸前となり、金八先生が臨時で中野先生の代役を務めることになりました。
そんな3年B組を陰で支配していたのが、風間俊介さん演じる「兼末健次郎」です。表向きは優等生を装いながら、裏ではクラスメイトの弱みを握り、クラス全体を掌握していました。
中野先生への暴行事件も、健次郎が数名の生徒をけしかけて扇動したものです。しかもこの暴行シーンは非常に凄惨で、羽交い締めにされた中野先生の腹部を何度も殴打し、倒れ込んだ後も暴行は止まりません。そして最後は健次郎の一撃によって意識を失い、中野先生はそのまま病院へと搬送されることになります。これだけでも十分に悪質ですが、健次郎はさらに追い打ちをかけるように、「菊の花」をお見舞いとして送りつけ、中野先生を自殺未遂にまで追い詰めました。
なお健次郎の家庭もシリーズ屈指の「地獄」でした。引きこもりの兄は害虫が這いまわるゴミだらけの部屋に閉じこもり、家庭内暴力も日常茶飯事です。父親はそうした現実を見て見ぬふりで、母親は息子に依存するばかり。健次郎にのしかかる精神的な重圧は、計り知れないものがあったはずです。この家庭環境こそが、彼を陰湿な性格へと追い込んでいったのでしょう。
それだけに健次郎にも同情せざるを得ない部分があるものの、放送から25年以上が経った今もなお、SNS上には「中学生とは思えない非道さだった」「健次郎がマジでトラウマすぎていまだに風間くん見ると心臓がヒュッとなる」「菊の花の意味を知らず喜んでいた中野先生のシーンがかわいそうすぎて見ていられない」といった声が見られます。
視聴者の記憶にいかに深く刻まれたキャラクターだったかがうかがえると同時に、『金八先生』の長い歴史のなかでも、もっとも記憶に残る「問題児」だったことは間違いありません。
(ハララ書房)