『帰ってきたウルトラマン』のトラウマ回「怪獣使いと少年」 監督が「飛ばされた」噂は本当か?
ウルトラシリーズ最大の問題作としても名高いのが、『帰ってきたウルトラマン』の第33話「怪獣使いと少年」です。この回の放送後に監督が飛ばされたという噂は本当でしょうか。
監督が飛ばされるほど「問題作」?

『帰ってきたウルトラマン』の第33話「怪獣使いと少年」は本作のなかでも、いや初代から現在に至る全てのウルトラシリーズのなかでも、屈指の問題作と言われ続けています。
ウルトラシリーズは、人間側の欺瞞を克明に描く、子供にとっては容赦ない残酷なエピソードがたびたび制作されてきました。それゆえに時代、世代を超えていまもなお愛され続けています。しかしながら、この「怪獣使いと少年」にかんしては、そのショッキングな内容から、こんな噂すら流れているのです。
「視聴者から抗議が殺到して、監督が干された(飛ばされた)」
特撮ファンの間で、まことしやかに伝承されてきたこの話は、本当なのでしょうか。実際に担当した監督の証言を引用しつつ、解説していきます。
まず、改めて「怪獣使いと少年」の概要を説明しましょう。身寄りのない少年が、地球に調査しにきた「メイツ星人」と出会います。メイツ星人は地球の大気汚染ですっかり衰弱しており、少年はメイツ星人をかくまいながら、廃屋で看病を続けていました。
ところが、周辺住民は少年を気味悪がり、差別、迫害を続けます。それを知った主人公「郷秀樹」は、少年の身辺調査に乗り出し、彼を心配するようになりました。
そして、メイツ星人の存在が周辺住民に知られると、暴徒と化した住民たちが少年たちの元へ押し寄せてきます。騒ぎのなか、警察官が撃った弾がメイツ星人に命中し、彼は命を落としました。
すると、メイツ星人が死んだことで、封印されていた「ムルチ」という怪獣が目覚め街を襲います。逃げ惑い、MAT隊員である郷秀樹に助けを乞う人びとの身勝手さに郷は絶望し、一時は戦意喪失しながらも、最終的にはムルチを倒すのでした。
軽いあらすじ説明だけでも、心が痛むエピソードです。実際、劇中の差別や迫害の酷さや、人間に絶望するウルトラマンの描写は、少なからぬショックを受けます。
さて、このエピソードを担当した監督が「飛ばされた」という噂は本当なのでしょうか。「ウルトラ特撮 PERFECT MOOK vol.06」に掲載された、この回を監督した東條昭平さんの証言を確認してみると……
「撮影を終えて仕上げてみると、TBSがフィルムを受け取ってくれません。僕と上原さん(※脚本家の上原正三さん)がTBSのプロデューサー、橋本洋二さんのところへ呼ばれましてね。橋本さんは特に強い口調ということでもなく、『上原君は、わかっているよね。仕上げの前に確認したのかい?』みたいな感じで、とにかく『血を見せないでくれ』ということでした。」
と、最初に撮った映像はTBSがフィルムを受け取ってくれなかったことが明かされています。その後、「怪獣使いと少年」はリテイクされました。「うち、パン屋だもん」の名ゼリフが印象的な、パン屋のお姉さんのシーンはこの時に追加されたものでです。
またリテイク前は警官が発砲するのではなく、住民がメイツ星人を槍で突く内容だったとのことで、より凄惨な内容であったことが分かります。ではその後、東條さんに「処分」はあったのでしょうか。
「それが関係したのか、年末から放送が始まった『ミラーマン』に回されました(笑)。タイミングよく、別番組が始まっていたんです。」
少し濁してはいますが、円谷プロの別作品『ミラーマン』に「回された」という表現からも分かる通り、噂ほどひどい扱いではないものの、『帰ってきたウルトラマン』に関われなくなったのは本当のようです。とはいえ「作品」はお蔵入り、欠番扱いなどはされていません。現在も「怪獣使いと少年」は、問題作ではなく傑作として、私たちに差別や迫害の恐ろしさを突きつけています。
参考:「ウルトラ特撮 PERFECT MOOK vol.06」(講談社)
(片野)
