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高畑勲が『もののけ姫』に放った「辛らつな言葉」とは? 何度も「考えさせられる」

ビジュアル面ではカルト系漫画家からの影響も

社会的マイノリティに居場所を作った「たたら場」は、自然の逆鱗に触れてしまう。映画『もののけ姫』より (C)1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND
社会的マイノリティに居場所を作った「たたら場」は、自然の逆鱗に触れてしまう。映画『もののけ姫』より (C)1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND

 時代劇や伝奇ものなど、さまざまな要素をはらんだ『もののけ姫』は、多くの作品からインスパイアされていることがうかがえます。「神殺し」という深淵なモチーフは、「スーパー歌舞伎」の原作者として知られる梅原猛氏の戯曲『ギルガメシュ』などから影響を受けています。

 シシ神の森には「コダマ」と呼ばれる不思議な精霊たちが暮らしていますが、そのビジュアルは漫画家・諸星大二郎氏の『マッドメン』に出てくる先祖の霊たちを思わせます。サンが被る原始的な造形の仮面も、諸星大二郎っぽさを感じさせます。『暗黒神話伝』『徐福伝説』など日本神話や民俗学をテーマにしたユニークなマンガで知られる諸星大二郎氏の大ファンであることを、宮崎監督は認めています。

 旅に出た若者がヒロインや新しい仲間と出会い、運命に立ち向かっていくというストーリーは、冒険ファンタジーの王道的設定ではあります。しかし、宮崎監督のキャリアを振り返ると、東映動画(現在の東映アニメーション)時代に若手アニメーターとして参加した『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968年)からの影響がとりわけ大きいように思います。

 高畑勲監督の監督デビュー作でもある『太陽の王子』は、アイヌ民族の神話をモチーフにしたものです。『太陽の王子』にはオオカミ、鍛冶屋、巨人が出てくるほか、敵か味方か分からない二面性のあるヒルダは、サンに通じるミステリアスなヒロイン像となっています。

 宮崎監督の幅広い読書体験、アニメーターとして体に刻んできた記憶、そして卓越したイマジネーションが渾然一体化して、『もののけ姫』が誕生したのではないでしょうか。

高畑監督が『もののけ姫』に向けたコメント

 宮崎監督に多大な影響を与え続けた高畑監督ですが、『もののけ姫』に対しては以下のようなコメントを残しています。

「よく出来たファンタジーだが、史実とは違う。自分で学習しない人には、あれが中世の日本だと誤解させる危険性がある。『生きろ』と上段から言われて、中高生が『生きる勇気をもらった』と感想を述べているが、あまりに平凡な日常と乖離しており、滑稽である」「いかに世界観がリアルでも、ファンタジーはイメージトレーニングにはなり得ない」(フィルムアート社『宮崎駿全書』より)

 盟友に対して、辛らつな言葉を口にした高畑監督ですが、ただ批判するだけでなく『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999年)を撮ることで、「平凡な日常」を生きることの大切さを描いてみせています。

 宮崎監督は『もののけ姫』を最後の作品にすると語っていましたが、その後も長編アニメを撮り続けています。アニメーションの世界をともに渡り歩いてきた仲間であり、妥協を許さない先輩でもあった「畏友」高畑監督がいたからこそ、宮崎監督は今なお冒険を続けているのかもしれません。

(長野辰次)

【画像】「えっ、想像がつかない?」これが宮崎駿監督に影響を与えた作品たちです(5枚)

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長野辰次

フリーライター。映画、アニメ、小説、マンガなどのレビューや作家インタビューを中心に、「キネマ旬報」「映画秘宝」などに執筆。現在公開中の『八犬伝』(キノフィルムズ配給)の劇場パンフレットなどにもレビューを寄稿している。

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