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高畑勲が『もののけ姫』に放った「辛らつな言葉」とは? 何度も「考えさせられる」

宮崎駿監督の時代劇アニメ『もののけ姫』は公開時に194億円という大ヒットを記録。宮崎監督の前作『紅の豚』の興収記録47億円を、大幅に更新してみせました。続く『千と千尋の神隠し』も記録的大ヒットとなり、日本のアニメーションは新次元へと突入していきます。社会現象にもなった『もののけ姫』を改めて考察します。

日本映画の興収新記録を樹立

物語序盤でアシタカに宿った「呪い」はエンディングでも消えることはなく、考えさせられる結末に。映画『もののけ姫』より (C)1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND
物語序盤でアシタカに宿った「呪い」はエンディングでも消えることはなく、考えさせられる結末に。映画『もののけ姫』より (C)1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND

「はりつめた弓の ふるえる弦よ」

 カウンターテナー歌手の米良美一さんが歌う主題歌も大ヒットしたのが、劇場アニメ『もののけ姫』(1997年)です。スタジオジブリ制作、宮崎駿監督による時代劇アニメ『もののけ姫』は、劇場公開から1年間で興収194億円(現在は201億円)を弾き出し、日本映画の興収新記録を打ち立てました。

 その後、宮崎監督の『千と千尋の神隠し』(2001年)が興収300億円を超え、記録はさらに更新されますが、アニメ作品が興収100億円を軽々と超えたことから、日本の映画界とアニメ界は新次元に入ったことを印象づけました。主人公のアシタカが、ヒロインであるサンに告げた「生きろ、そなたは美しい」という言葉を覚えている人も多いのではないでしょうか。

 2025年8月29日(金)の「金曜ロードショー」(日本テレビ系)では、13回目となる『もののけ姫』が放映されます。「文明と自然は調和できるのか?」という壮大なテーマを抱えた『もののけ姫』は、観るたびにいろんな発見ができる作品でもあります。『もののけ姫』の魅力、アイデアの源泉となった作品を振り返ります。

アシタカの「呪い」が最後まで解けない理由

 時代は室町時代中期。北方民族である「エミシ」の若き王子であるアシタカが、タタリ神を退治するというド派手なアクションシーンから、物語は始まります。ミミズの大群が集まったかのようなタタリ神が、とても不気味です。観ていてゾワゾワさせられます。

 タタリ神を倒すことには成功するアシタカですが、人間を憎むタタリ神の「呪い」が右腕に痣(あざ)として残ります。やがては死にいたる強い「呪い」です。呪われた者はたとえ王子でも、エミシの里から出ていかなくてはいけません。ヤックルと呼ばれる家畜に乗り、アシタカは「呪い」を解く方法を探しに旅立ちます。

 旅に出たアシタカは、生と死を司どる「シシ神」が暮らす森があることを知り、山犬に育てられた人間の少女・サン、製鉄所である「たたら場」を営むエボシ御前らと出会います。

 シシ神のいる森を守ろうとするサン、その森すらも支配しようとするエボシ御前、「たたら場」を手に入れようとする京都の権力者たち……。さまざまな立場の主義主張がぶつかり合うアクション絵巻となっています。アシタカが弓矢を射る格闘シーンは人間の腕や首が吹っ飛ぶことから、米国ではPG13指定となっています。

 目を見張るのは、バイオレンス描写だけではありません。「たたら場」では、遊女として売られた女性たちが元気に働き、「らい病」と呼ばれてきたハンセン病患者たちも穏やかに暮らしています。社会的マイノリティーたちが安心して生活できるコミュニティーとして、エボシ御前が営む「たたら場」が魅力的に描かれています。しかし、鉄づくりを続けていくためには、近隣の森を伐採し、山を切り崩す必要があります。

 人間社会の繁栄か、環境保護か。部外者であるアシタカの目線から、現代社会につながる「環境問題」が問い掛けられています。アシタカの「呪い」は最後まで完全に消えることはありません。文明と自然の調和は、永遠に続く課題であることを示したものだと思われます。

 勧善懲悪ものとは異なるテーマを持つ『もののけ姫』ですが、熟練の域に達した宮崎監督や設立10年を迎えたスタジオジブリの総力が結集され、アクション&ファンタジーアニメの大作に仕上がっています。

【画像】「えっ、想像がつかない?」これが宮崎駿監督に影響を与えた作品たちです(5枚)

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長野辰次

フリーライター。映画、アニメ、小説、マンガなどのレビューや作家インタビューを中心に、「キネマ旬報」「映画秘宝」などに執筆。現在公開中の『八犬伝』(キノフィルムズ配給)の劇場パンフレットなどにもレビューを寄稿している。

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