『AKIRA』の影に隠れた傑作! 大友克洋×江口寿史が描いた『老人Z』 美少女介護士と暴走ロボの天才的発想
劇場アニメ『AKIRA』の大友克洋監督が原案・脚本・メカニックデザインを、「美女を描かせたら漫画界一」と呼ばれる江口寿史氏がキャラクターデザインを手掛けたのが、1991年9月14日に公開されたオリジナルアニメ『老人Z』です。高齢化社会を予見した内容は、いま観るとより共感できる内容であり、「もうひとつの『AKIRA』」だったことが分かります。
「敬老の日」にぴったりなSFエンターテイメント

天才と天才を融合させたら、どんな化合物が誕生するのか? そんな期待をファンに抱かせたのが、大友克洋(原作、脚本、メカニックデザイン)、江口寿史(キャラクターデザイン)という人気漫画家同士がタッグを組んだオリジナルアニメ『老人Z』(1991年)でした。
大友克洋氏は初めての長編アニメ監督作『AKIRA』(1988年)が絶賛され、ビデオ化されてますます人気が高まっていました。江口寿史氏は「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された『ストップ!! ひばりくん!』などのギャグマンガで知られ、「美女を描かせたら漫画界一」という評判を得ていました。
高齢化社会、介護問題といった題材を、コミカルなSFエンターテイメントとして、30年以上も前に取り上げていたことも特筆されます。
「敬老の日」に視聴するのにぴったりな『老人Z』は、話題性こそ高かったものの、『AKIRA』ほどのインパクトを残すには至りませんでした。では、どんな内容だったのでしょうか。
「アンナミラーズ」の制服を着た介護ボランティア
物語の始まりは都内の下町。古い木造アパートでひとり暮らししている高沢おじいちゃん(CV:松村彦次郎)のお世話を、看護学校に通う三橋晴子(CV:横山智佐)がボランティアで看ています。「アンナミラーズ」の制服姿のまま介護する晴子は、いかにも江口氏らしい美少女キャラクターです。
高沢おじいちゃんは、妻のハルさんに先立たれ、認知症ぎみです。そんな折、高沢おじいちゃんは、厚生省が開発した「全自動介護ロボット」のモニターに選ばれ、住み慣れたアパートから強引に連れ出されてしまうのでした。
確かに、介護ロボットに任せておけば、シモの世話を他人に頼まずに済みますし、コンピューターを相手におしゃべりすることもできます。安心安全で、介護人の必要はありません。でも、晴子の目には、全身がチューブだらけになって、ずっと寝たきり状態の高沢おじいちゃんが幸せそうには見えないのでした。
ある晩、「助けて晴子さん」という高沢おじいちゃんからのメッセージが届きます。晴子はコンピューターに強い老人たちの協力を得て、介護ロボットをハッキング。高沢おじいちゃんを助けようとします。
ところが、高機能の人工知能を搭載した介護ロボットは、高沢おじいちゃんの記憶とシンクロを始め、大暴走を始めます。
介護ロボットと一体化した高沢おじいちゃんは、最愛の妻?ハルさんとの思い出の場所である由比ヶ浜のある鎌倉を目指します。介護ロボット開発の裏には国際的な陰謀も隠されており、晴子たちの想像を越えた大事件へと発展していくのでした。




