初代ウルトラマン「中の人」は騙された? スタッフから言われたまさかの「嘘」とは
まだ「スーツアクター」という職業の地位が低かった頃、『ウルトラマン』の「中の人」はスタッフから嘘をつかれて、オファーを引き受けてしまったのです。
「主役」と聞いていたけど? 丸め込まれた若き日のウルトラマン

放送開始60年を迎える『ウルトラマン』の銀色に輝く巨人「ウルトラマン」の姿は、令和の現在もなお、新たなファンを増やし続けています。そのウルトラマンの「中の人」すなわちスーツアクターだった方は、俳優の古谷敏さんです。
古谷さんは次作『ウルトラセブン』では、「アマギ隊員」役を演じました。いまでこそ伝説の「スーツアクター」として、世界的に知られている古谷さんですが、『ウルトラマン』への参加は、かなり抵抗があったといいます。何なら、そのキャリアは「嘘」から始まったと言っても良いでしょう。
古谷さんが「ウルトラ」シリーズに参加したのは、『ウルトラマン』の前作『ウルトラQ』からでした。といっても、セリフのある役ではありません。その時の仕事は宇宙人「ケムール人」の、スーツアクターでした。
また「海底原人ラゴン」も、古谷さんがなかに入って演じたものです。なるほど、すらりと足が長く八頭身という常人離れしたスタイルに、現場スタッフが惚れ込む気持ちはよく分かります。
しかし、当時の古谷さんからすれば、これらは決してうれしいオファーではありません。何せ、古谷さんは当時売り出し中の若手俳優です。「顔出してなんぼ」の俳優業において、「着ぐるみ」は当時、名誉とはかけ離れた仕事でした。
そんな俳優として複雑な気持ちを抱えていた古谷さんに、今度は「主役のオファー」が舞い込みます。もともとメロドラマ志望だった古谷さんは、このオファーにすっかり心躍らせました。相手役の女の子は誰か、監督は誰なのか?ウキウキ気分で、詳しく話を聞いてみると、これがウルトラマンのスーツに入る仕事だったのです。
主役は主役かもしれませんが、このオファーに古谷さんは意気消沈し、最初は断ってしまいます。ところがデザイン担当の成田亨さんをはじめ、多くのスタッフに「どうしてもお願いしたい」と頼まれ、古谷さんは渋々ながら承諾の方向で話を進めました。
とはいえウルトラマンは毎週、怪獣や宇宙人と戦わなくてはなりません。そこで古谷さんは、アクションの経験不足を口実に、またやんわり断ろうとしました。するとスタッフから、「そういうのは特撮でやるから、立っているだけでいい」と、丸め込まれてしまいます。
さらに、「でんぐり返しもしなくていい。それが特撮だから」とも言われたそうです。一体、どうすればよかったのでしょう。結果として古谷さんはスーツを着た状態で死に物狂いの格闘することになりましたが、作品は大成功を収めました。当時の撮影現場の熱量、それに伴う強引さには驚かされます。
こうしてうっかり口車に乗せられてしまった古谷さんですが、前述の通り『ウルトラセブン』では、アマギ隊員に抜擢されます。さらに、スーツアクターの評価が高まるにつれ、古谷さんの偉業もまた再評価されてきました。本当に『ウルトラマン』の主役だったと言えるでしょう。
参考書籍:『スーツアクターの矜持』(集英社)
(片野)

