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【追悼】アニメ職人に徹した大塚康生氏 『ルパン三世』に活かされた、異例の経歴

『ルパン三世』『未来少年コナン』など、数々の人気アニメで作画監督を務めた大塚康生さんが亡くなられました。大塚さんが初めて作画監督となった劇場アニメ『太陽の王子 ホルスの大冒険』は、スタジオジブリ作品の源流ともいえる名作です。さまざまな現場を渡り歩き、飄々と生きた大塚さんの代表作を振り返ります。

『パンダコパンダ』ほか代表作を追悼放映

大塚康生氏が作画監督をつとめたアニメ『パンダコパンダ』 (C)TMS
大塚康生氏が作画監督をつとめたアニメ『パンダコパンダ』 (C)TMS

 アニメーターとして、国産アニメの黎明期から数多くの作品に携わってきた大塚康生さんが、2021年3月15日に亡くなられました。89歳の生涯でした。温厚な人柄で多くの人に慕われ、また大塚さんが手がけたキャラクターたちはユーモラスさがあり、元気いっぱいに動き回る姿で幅広い層のファンを楽しませてきました。

 大塚さんが東映動画(現在の東映アニメーション)時代の同僚・小田部羊一氏と共同で作画監督を務めた劇場アニメ『パンダコパンダ』(1972年)、続編『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』(1973年)が、2021年3月25日(木)の20:30からBS12で放送されます。

 トムス・エンタテインメントの公式YouTubeチャンネル「TMSアニメ公式チャンネル」では、大塚さんがキャラクターデザイン&作画監督を務めた『ルパン三世』第1シリーズの第1話「ルパンは燃えているか…?!」、『侍ジャイアンツ』の第1話「ほえろ!バンババン」などが配信中です。

 大塚さんが初めて作画監督に就いた劇場アニメ『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968年)は、3月26日(金)20:30から「東映チャンネル」で配信されることが決まっています。

作家ではなく、職人の道を極めることに

 大塚さんは1931年に島根県で生まれ、子供の頃は機関車や軍用車などのスケッチに熱中したそうです。戦後間もない東京に上京するために、厚生省の採用試験を受け、これに合格。麻薬取締官事務所に勤務しますが、公務員としての安定した収入を捨て、東映動画の第1期アニメーターになります。麻薬Gメンからアニメーターに転職した、異色の経歴の持ち主でした。

 東映動画時代には、劇場アニメ『少年猿飛佐助』(1959年)や『わんぱく王子の大蛇退治』(1963年)などでダイナミックなアクションシーンやキャラクターのコミカルな動きを披露し、腕利きアニメーターとして評価されるようになっていきます。

 東映動画の若手スタッフが集まった『太陽の王子』で、大塚さんは作画監督に抜擢されます。作画監督は、個性の強いアニメーターたちを束ねる重要なポジシションです。後輩である高畑勲氏を演出(監督)に推薦したのは、大塚さんでした。『太陽の王子』はヒットこそしませんでしたが、今では大人も楽しめる冒険ファンタジーの名作として知られています。スタジオジブリのルーツ的作品だと言えるでしょう。

 でも、大塚さんは興収的に失敗したことだけでなく、苦い体験を『太陽の王子』で味わいます。初めて演出に挑む高畑氏を創作面で支えることができなかったと、自伝『作画汗まみれ』(文春ジブリ文庫)で振り返っています。このとき、高畑氏を創作面で支えたのが、新人時代に大塚さんが指導した宮崎駿氏でした。宮崎氏の仕事に対するあふれんばかりの情熱と才能を大塚さんは評価する一方、大塚さん自身は「自分は作家ではなく職人」と考えるようになったようです。

【画像】大塚康生さんの偉大な仕事と人柄がわかる書籍(5枚)

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