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『悪魔くん』は日本のテレビ史を変えていた…? 多彩なバージョンが生んだ、意外な影響

「水木しげる生誕100周年記念」として新作アニメが発表された『悪魔くん』が、再び注目を集めています。しかし、微妙に違う原作マンガの数々や、かつて特撮番組として放送された時に与えた大きな影響は、あまり知られていません。

日本を代表するコンテンツ群が生まれるきっかけに…?

1989年のアニメ『悪魔くん』 (C)水木プロ・東映アニメーション
1989年のアニメ『悪魔くん』 (C)水木プロ・東映アニメーション

 本日4月15日は1989年にテレビアニメ『悪魔くん』が放送開始した日です。『悪魔くん』といえば、先日「水木しげる生誕100周年記念4大プロジェクト」の一環として、新作アニメの制作が発表されています。実は、この『悪魔くん』には主人公や設定が大きく違った複数の物語があることをご存知でしょうか?

 最初の『悪魔くん』は、1963年に貸本マンガとして発行されました。本来は全5巻で完結するはずが、途中で打ち切りが決まって全3巻となり、当初の予定とは違う結末で終了します。作者である水木しげる先生の、社会に対する風刺が大きく影響している作品と言われていました。

 主人公の名前は「松下一郎」。みんなから「悪魔くん」と呼ばれる天才児です。その後、1970年に「週刊少年ジャンプ」でリメイク版が連載されました。

 しかし、それ以前の1966年にまったく別の『悪魔くん』が「週刊少年マガジン」で連載されています。この時の悪魔くんの名前は「山田真吾」。名前だけでなく姿や性格も大きく異なり、作品世界もまったく違います。

 実はこの『悪魔くん』は、貸本時代のものを少年誌用に再編した作品だったのです。当初、マガジン編集部は『墓場の鬼太郎』のアニメ化を進めていたのですがうまくいかず、アニメより製作費の安い実写を足がかりにしようと考えます。そこで『悪魔くん』に白羽の矢が立ったのでした。

 この実写ドラマ版は、のちに「仮面ライダー」シリーズや『秘密戦隊ゴレンジャー』などの作品を手掛けることになる、東映の平山亨さん初のプロデューサー作品となります。当時の東映は映画部のリストラ先としてテレビ部があり、そのことから映画に負けないものを作ろうという気概にあふれていたと聞きました。その情熱が実写版『悪魔くん』を、当時の子供たちが喜ぶ人気作へと作り上げます。

 その高い人気ゆえ番組延長も検討されていたのですが、クオリティ優先で製作したために予算が当初の3倍を超えてしまい、番組は予定通りの半年で終了してしまいました。この時、平山さんは「会社をつぶす気か!」と怒鳴られたそうです。

 しかし、この作品により子供たちからの人気を獲得した水木先生の知名度は格段に上がり、改名した『ゲゲゲの鬼太郎』はアニメ化への道を進み、平山さんは水木先生との二人三脚から学んだものを生かして、石ノ森章太郎先生と名作『仮面ライダー』をはじめとする特撮ヒーロー番組をいくつも作り上げました。つまり実写版『悪魔くん』がなければ、『ゲゲゲの鬼太郎』も『仮面ライダー』も、テレビの人気作品にはならなかったかもしれません。

【画像】多様なバージョンがあった『悪魔くん』、テレビ史を動かしたのは「特撮版」…?(5枚)

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