『ドラえもん』でおなじみ「土管のある空き地」 昭和ウルトラ作品が写していた!
昭和のマンガ作品には、遊び場としての「土管」が数多く登場しますが、正直ピンとこない世代の方も多いのではないでしょうか。「土管」を実際の映像として実感するためには、実は昭和ウルトラシリーズがうってつけなのです。
そもそも、「土管」が積んであったのはナゼ?

アニメ『ドラえもん』(原作:藤子・F・不二雄)の空き地には今なお、積み上げた土管(厳密にはコンクリート製のヒューム管。便宜上「土管」と呼称)が子供の遊び場のシンボルとして鎮座しています。ですが、令和の現在では土管どころか「空き地」自体も子供たちにとって馴染みが薄いのではないでしょうか。
東京の風景の一部として土管が設置されていたのは、おおよそ1960~1970年代頃。『ドラえもん』以前の藤子作品(例えば『オバケのQ太郎』)や、『おそ松くん』(著:赤塚不二夫)などでも子供らが集う空き地、あるいは資材置き場には土管が当然のごとく登場しています。
いったい、あの土管は何だったのでしょうか。ごくごく簡単に説明しますと、急速に東京の人口が増えるなか、新たな下水道の設置が追いつかず、下水道工事に使用予定の土管があちらこちらに置かれていた……というのが背景のようです。
工事が終われば土管も姿を消し、今はただマンガやアニメ作品のなかで子供たちの「遊び場」であり続けている……ちょっとセンチメンタルな存在でもあります。
そうはいっても、『ドラえもん』の土管が現実にあった「日常」をいまいち想像できない世代の方も多いでしょう。そんな方が気軽に当時の子供たちの記憶を追体験できる、国民的な映像作品があります。それが、ウルトラシリーズです。すっかり前置きが長くなりましたが、かつて東京にあふれていた「土管がある風景」を堪能できる、昭和ウルトラシリーズの「土管エピソード」を紹介していきます。
●『ウルトラQ』の「カネゴンの繭」
まずは、1966年放送開始のウルトラシリーズ第1作『ウルトラQ』より、「カネゴン」の登場回でもある15話「カネゴンの繭」。ロケ地はかつて多摩市に存在し、通称「アパッチ砦」と呼ばれる丘の周辺(現在の聖ヶ丘)です。この時、子供たちが遊ぶ工事現場の広大な造成地こそ、まさに土管の宝庫でした。
大小さまざまな直径の土管が積み重なり、ある時は作戦会議の場となり、ある時は隠れ場となり、カネゴンと少年たちの物語を盛り上げる舞台装置として大いに貢献してくれるのです。……それにしてもカネゴン、可愛いです。
●『ウルトラマン』の「恐怖の宇宙線」
続いては1966年放送の『ウルトラマン』の第15話「恐怖の宇宙線」。少年が描いた怪獣ガヴァドンが実態化してしまうが、特に何もしないという、なんともユーモラスな人気エピソードです。
その時、少年がガヴァドンを描く場所こそ、大量に積まれた土管に他なりません。あの時、子供らにとって「土管」はキャンバスでもあったのです。ロケ地となったのは、かつて日野市にあった羽田ヒューム管工場の製品置き場でした。
●『ウルトラマンタロウ』の「あっ!タロウが食べられる!」
1970年代に入ってもまだ「土管」は子供たちの格好の遊び場だったようです。1973年放送開始の『ウルトラマンタロウ』は、子供たちが主役となるエピソードが多く、しょっちゅう「土管のある風景」が登場し、これがまた癒されるのです。
『タロウ』の珠玉の土管エピソードとしては、終盤第44話「あっ!タロウが食べられる!」が挙げられるでしょう。怪獣オニバンバから必死で少年が逃げるシーンで大量の「土管」が大活躍。本来、恐怖のシーンのはずが、どこか楽しげに描かれているのは土管のもつ「遊び場」としてのイメージが大きいからでしょう。
果たしてこのロケ地はどこなのかといえば、なんと『ウルトラマン』のガヴァドン回と同じ企業の(おそらく別の)資材置き場とのこと。昭和「ウルトラ」シリーズにおける制作体制は変わろうとも、ロケハンの知識は受け継がれていることがうかがえます。
かつては遊び場であり、作戦会議の場であり、避難所であり、またキャンバスにもなった「土管」。いまその多くは当時の少年たちの思い出とともに地中に埋まっていると思うと、私たちは確かな歴史の上で暮らしているのだ……という実感も湧いてきます。
なお、今回紹介した昭和ウルトラシリーズ作品は、配信サービス「ウルトラサブスク」こと「TSUBURAYA IMAGINATION」で視聴することができます。
(片野)