ヒロインの呼び声が高い男性キャラ4選 もはや「ヒロイン=女性」ではないのかも…
今、「ヒロイン」という言葉がぐらつき始めています。従来、女性を指す言葉でしたが男性キャラにも用いられるようになっています。いったい、どのようなキャラがそう言われているのでしょうか?
「ヒロイン」の語は今やジェンダーフリーか 主人公への愛が最強のヒロインを生む
「ヒロイン」 (heroine) 小説・戯曲などの女主人公。また、ある事件の中心となる女性。(精選版 日本国語大辞典)
「ヒロイン」の存在は物語の人気に大きく影響を与えます。たとえば『タッチ』(著:あだち充)の南ちゃん、『うる星やつら』(著:高橋留美子)のラムちゃん、『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイ、アスカなどはもはや国民的人気ヒロインといっても良いでしょう。
さて「ヒロイン」という言葉は基本的には女性を指す語として用いられてきましたが、ここ最近ではどうにも様子が変わってきているようで、しばしば男性キャラにも(半ばネタ的な含みをもたせつつも)この「ヒロイン」という語が割り当てられる向きがあるのです。厳密な「ヒロイン」の定義はさておくとして、令和の時代において「ヒロイン」ポジションを勝ち得た男性キャラクターたちをご紹介。なぜそのように言われているのかもあわせて解説します。
●『呪術廻戦』の正ヒロイン説が濃厚な伏黒恵
超人気ダークファンタジー『呪術廻戦』(著:芥見下々)には数多くの女性キャラが登場しますが、ネットにおいて「ヒロイン」と目されているのは虎杖悠仁の相棒、伏黒恵に他なりません。初登場時からしばらくは読者もそのクールな見た目から「ジャンプ」王道のライバルキャラ思い込まされてきましたが……これはだまされました。
伏黒は虎杖を陰ながら心配し、面倒見もよく、ときに弱さも見せる、これは「ヒロイン」説を支持せざるを得ません。また本作の辞書的な意味におけるヒロインは釘崎野薔薇ですが、彼女は逆に伝統的な「ヒロイン像」から解放されたキャラとして描かれているのも好対照です。
●清純派ヒロインとしての『トリコ』の小松
「ジャンプ」作品では『トリコ』(著:島袋光俊)のメインキャラクターである小松も、またその言動があまりにヒロインすぎることで知られています。
まず大前提として、主人公トリコは筋骨隆々の美食屋。一方、料理人の小松は対照的に小柄な青年であり、何よりトリコを心から慕っています。最初からヒロインとしての下地は完成していたのです。
未知なる美食を求める冒険のさなかにおいて小松は何度もトリコに惚れ直し、トリコもまた小松の食材への誠実さにほだされることとなります。さらに隙あらば小松を誘惑するライバルも出現。女性キャラは少ない本作でしたが確固たる「ヒロイン」は存在した、そう思わせてくれる名作でした。
●愛されおバカヒロイン『ゴールデンカムイ』の白石
『ゴールデンカムイ』(著:野田サトル)のヒロインは誰なのかという問いは重要です。主人公・杉元佐一と運命をともにするアシリパさんも辞書的にはヒロインで間違いありませんが、どうにもネットでは愛され脱獄バカ野郎・白石由竹をヒロインに推す声が後を絶ちません。本作の男衆は脱獄囚か軍人か元新撰組、戦闘能力においては言わずもがなの連中ばかりです。杉元はさらにそこに「優しさ」を上乗せしたナイスガイであり周囲も一目置くのは当たり前。戦闘力において劣る白石は実は守らないといけないポジションなのです。
普段は三枚目ながらも他人の心の機微に敏感な白石には杉元も心を許しているようであり、だからこそ樺太でのあの再会はまぎれもない「愛」を感じる名シーンとなりました。
●中国4000年のヒロイン力! 「刃牙」シリーズの烈海王
伝統的な少年マンガのヒロインは守られる側でありましたが、この男に関してはそんな必要微塵もありません。それでも「刃牙」シリーズの烈海王はなぜか「ヒロイン」としての呼び声が高いのです。
画像を一瞬でもご覧になっていただければお分かりの通り、最強の中国拳法の達人。烈海王は本来、ヒロインの対義語です。しかしながら彼は作中、助けるべきと判断すれば死刑囚であっても救いの手を差し伸べ、また随所で手料理を振る舞いまいます。さらに料理を振る舞った刃牙に「ホント、やさしいのな」と言われたときなんかは顔を真っ赤にしながら「食うんだ」と語気を強める始末。この瞬間、烈海王は史上最強のヒロインの称号までも得てしまったのです。
ヒロイン像の変化は様々なメディアで論じられてきましたが、令和の現在において「ヒロイン」とは徐々に男女の別を離れ「慈み」と「愛らしさ」を体現するものへと変化してきているのかもしれません。
(片野)