『シン・ウルトラマン』を読み解く重要キーワード 旧作が未見でも楽しめる?【ネタバレなし】
「禍威獣」と「禍特対」、そしてファンが考察するポイントは
ウルトラマンのデザインは原典に立ち戻ったわけですが、他の部分はどうでしょうか? そこは庵野さんらしく、リスペクトする部分は徹底的に再現するのとは真逆に、改変する部分は徹底的に手を加えているようです。
すでに予告編でも明らかですが、同作では聞いたことがある言葉なのに漢字の違う単語がありました。それが「禍威獣」と「禍特対」です。
「禍威獣」とは「かいじゅう」。そのままズバリ怪獣のこと。本作の世界観では日本だけに現れる巨大不明生物で、政府が公募によって名づけたと設定されています。上映前から予告編で、かつての「透明怪獣ネロンガ」と「ウラン怪獣ガボラ」が新しい姿で登場、商品も販売されていました。
もうひとつの「禍特対」は「かとくたい」。防災庁の専従組織である「禍威獣特設対策室専従班」の略称です。これはその名の通り『ウルトラマン』における科学特捜隊、通称「科特隊」にあたる組織でした。流星をモチーフにしたバッジはデザインこそ変わりましたが、かつての科特隊をイメージしたものです。原典と同じくメンバーは5人でした。
この他、本作での宇宙人は「外星人」と呼称されています。予告編では「外星人ザラブ」が姿を見せていますが、『ウルトラマン』に登場したザラブ星人のことをおぼえているなら「アレ」を想像する人も多いことでしょう。
また人間体として登場し、「外星人第0号メフィラス」と名刺に書かれていたキャラにも注目が集まっていました。『ウルトラマン』に登場したメフィラス星人の登場も、同作の注目ポイントです。
『ウルトラマン』を一般映画にするというコンセプトを持った本作は、これまで真面目に『ウルトラマン』を観ていなかった人ほど楽しめるかもしれません。アニメ特撮研究家の氷川竜介さんもTwitterで、リセットして「記憶喪失モード推奨」。……とコメントしています。その言葉の意味は映画を観ることで理解できるかもしれません。
もちろん『ウルトラマン』を大好きな人にも楽しめる作品です。ファンならば映像に隠された小ネタにどれだけ気づけるか?……そういった楽しみ方も存分にできることでしょう。
公開から8日間で観客動員100万人、興行収入15億円の大ヒットとなり、ますます注目度が高まっている『シン・ウルトラマン』。満を持して、これから劇場に足を運ぶ方は、今回紹介したキーワードやポイントに注目して、存分に作品を楽しんでもらいたいです。
(加々美利治)