『シン・ウルトラマン』を読み解く重要キーワード 旧作が未見でも楽しめる?【ネタバレなし】
2022年5月13日から公開中の空想特撮映画『シン・ウルトラマン』は、1966年から放送された特撮番組『ウルトラマン』のリブート作品であるとされてきました。上映が始まる前から、ファンの間ではさまざまな考察がなされています。『ウルトラマン』を見たことがない初心者の方でも、『シン・ウルトラマン』が面白くなるような重要キーワードや考察ポイントを整理します。
ウルトラマンにカラータイマーがないワケ

2022年5月13日から公開が始まった空想特撮映画『シン・ウルトラマン』。2016年7月29日に公開されたヒット作『シン・ゴジラ』に続き、庵野秀明さんと樋口真嗣さんたちが手がけた作品ということで話題になっています。そこで今回はネタバレを避けつつ、『ウルトラマン』を見たことがない人でも『シン・ウルトラマン』をより楽しめるようなキーワードと注目ポイントについて紹介します。
本作『シン・ウルトラマン』は、すでに公開されている『シン・ゴジラ』や来年公開予定の『シン・仮面ライダー』などと同時に企画が進行していた作品でした。本来なら2021年初夏公開予定と発表されていましたが、COVID-19の影響で製作スケジュールに遅れが出たことから、本年2022年の公開となったわけです。
本作は「1966年に放送された初代『ウルトラマン』を現代に舞台を置き換えたリブート映画化するもの」という発表がありました。しかし、独自に加えられた新たな解釈も多々見られます。なかでも衝撃だったのが、ウルトラマンのデザインが変わったこと。そう、本作のウルトラマンには、過去のウルトラマンでシンボルとされていた「カラータイマー」がありません。
もちろん、これには大きな理由がありました。それは本作のウルトラマンが、そのデザインを担当した成田亨さんが1983年に描いた「真実と正義と美の化身」をもとにしたものだからです。この時に描かれたウルトラマンにはカラータイマーがありませんでした。……というよりも、成田さんがデザインしたウルトラマンにはカラータイマーがついていなかったのです。
ウルトラマンのカラータイマーは撮影現場の判断で、子供にもわかりやすい弱点を取りつけようと考案されたものでした。結果、この判断がウルトラマンの戦いを盛り上げる一因となります。しかし、デザイナーとしての成田さんは納得できず、あえてカラータイマーのないウルトラマンも描き続けました。
こういった経緯から、本作のウルトラマンにカラータイマーがないのはデザインをした成田さんへのリスペクトというわけです。ちなみに他にも「目に覗き穴がない」「背中のファスナーを隠す背びれがない」「グローブやブーツの継ぎ目もない」「当時は塗料の関係でメタリック調にできなかった銀色の改善」……と、成田さんが当初デザインしたものに、できるだけ忠実なウルトラマンになりました。
そして、体形はウルトラマンのスーツアクターを担当した古谷敏さんのスタイルを再現しています。この古谷さんの体形には『ウルトラQ』でケムール人を演じたのを見た際に成田さんもほれ込んでおり、ウルトラマンは断ろうとしたところをけん命に口説き落とした……という逸話があるくらいです。
このような経緯で誕生した本作のウルトラマン。企画、脚本を手掛けた庵野秀明さんによると、このウルトラマンのデザインが本作誕生のきっかけとも取れることから、劇場でもっとも注目したいポイントといってもよいでしょう。