劇場版『シティーハンター』がBS放映 「すけべ」と「もっこり」は違うもの?
「もっこりしよう!」と美女に迫る主人公

銃さばきや格闘術には優れている冴羽リョウですが、女性にはまるでだらしないダメ男です。依頼人が美女だと「もっこりしよう!」と仕事そっちのけで迫ります。今なら確実にセクシャルハラスメント扱いされるでしょう。ボディタッチはもちろん、性的な言動もアウトです。
長尺の劇場版とあって、スケールの大きなド派手なアクションが繰り広げられます。しかし、劇中で飛び交う「もっこり」発言の回数もハンパありません。その分、香のお仕置き「100tハンマー」も容赦なくリョウに向かって繰り出されます。
一見すると、ただのエロ人間にしか思えないリョウですが、そんなリョウのいざという際の意外な顔を知ったニーナは、次第にリョウに関心を持つようになります。リョウのことを「すけべ」と呼ぶニーナでしたが、リョウは「すけべって言うのはやめて、もっこりと言って」と反論します。
「すけべともっこりは違うのですか?」
ニーナのリョウに対する質問は、なかなか考えさせるものがあります。
欠かせないのは、香の「100tハンマー」
すけべともっこりは、リョウにとっては大きく違うようです。リョウは魅力的な女性に対する好意として「もっこりちゃん」と呼び、また一種のコミュニケーションのつもりで「もっこりしよう」と迫ります。リョウは最大限の親しみを込めて、「もっこり」発言しているようです。
しかし、リョウに悪意はなくても、呼び掛けられた女性が不快に感じれば、それはもうセクハラです。香の「100tハンマー」というツッコミがなければ、助けを求めている人の弱味につけ込む本当のダメ人間にリョウはなってしまいます。
冴羽リョウは、あくまでも1980年代に誕生したフィクション上のキャラクターであり、マンガやアニメの世界の住人だから「もっこり」発言が許されている存在だと言えるでしょう。
女性にはだらしないリョウですが、悪いやつらの前では別人のように頼れる男に変わります。普段はダメダメでも、決めるときはバシッと決める。そんなリョウの二面性に、ファンは魅力を感じています。時代の変化を読み、「もっこり」を控えるようになったマジメなだけのリョウは、ファンも見たくないのではないでしょうか。
かつて新宿には、困った人に手を差し伸べるスゴ腕の始末屋たちがいた。冴羽リョウとその相棒・槇村香はそんな伝説のコンビです。1980年代という過ぎ去った時代に対する郷愁が、リョウと香の人気をより高めているのかもしれません。
(長野辰次)
※「冴羽リョウ」の「リョウ」の字は、正しくは「けものへん」にうかんむりのない「寮」ですが、機種依存文字のため、やむを得ずカタカナで表記しています。