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『イタダキマン』放送から40年 「短命」だったこともギャグに変えた?

「最悪の結果」すらギャグにするエンターティナー

『イタダキマン』主要キャラクターが描かれた、「イタダキマン DVD-BOX」(パイオニアLDC)
『イタダキマン』主要キャラクターが描かれた、「イタダキマン DVD-BOX」(パイオニアLDC)

 前述のように原点回帰と新機軸を入り交えた作品となった本作ですが、もっとも大きな変革となったのが、これまでシリーズを支えていた大きな柱であるふたりの主要スタッフの進退にありました。

 ひとりはこれまでオープニング曲にエンディング曲、挿入歌などの音楽面を支えてきた山本正之さんです。それまでのシリーズすべてでオープニング曲の作詞作曲を担当していましたが、本作ではエンディング曲のみとなりました。劇中の音楽も別の方の担当となっています。

 もうひとりは脚本家の小山高生さん。この小山さんが長期にわたって務めていたシリーズ構成を降りました。そのため、本作では脚本で1本のみの参加になっています。このシリーズ人気を支えてきた功労者である小山さんが参加しないことが、本作の作風に多大な影響を与えたのは明確でしょう。

 本作が低迷した理由は他にもありました。それは長年の間、高視聴率を維持していた土曜日18時30分の枠から19時30分の枠に移ったことにあります。たかが1時間の変化ですが、この時間枠にはTBS系列の『クイズダービー』、テレビ朝日系列では『あばれはっちゃく』シリーズという高視聴率番組がありました。さらに、当時は多くの家庭で見られていたプロ野球中継とかぶる可能性もあります。

 実はフジテレビはこの時間帯で苦戦していました。人気番組だった『欽ちゃんのドンとやってみよう!』(1時間半番組)が1980年3月に一度終了して以降、ドラマやクイズ番組、アニメなどさまざまなジャンルの番組を立ち上げましたが、半年で終わることが続いていたのです。

 この状況を打破するため、人気のタイムボカンシリーズをこの時間枠に入れました。しかし状況は好転せず、タイムボカンシリーズ初めての2クール終了となります。以前は20%を超えることもあった視聴率も、この枠では最高で9%台と屈辱的な数字でした。

 さらに放送話数が全20話という数字は、全12話だった『夜ノヤッターマン』が放送されるまでシリーズ最短記録になります。もっとも『夜ノヤッターマン』はもともと1クール予定ですから、『イタダキマン』が2クール以上の予定で開始されたなかでは最短シリーズということになるでしょう。

 もっとも、この後の『イタダキマン』の扱いはさすがタイムボカンシリーズと言えるかもしれません。歴代メンバーが集まったOVA『タイムボカン王道復古』(1993年)の第1話では、レース開始直後にトップに出るもののすぐにリタイアし、ナレーションで「シリーズを象徴してますねぇ」といじられていました。

 またPlayStation用ゲーム『ボカンGoGoGo』(2001年)では、「テレビでも一番早くゴール迎えちゃいました」という自虐的なセリフがあります。こういったマイナス要素までギャグにできるのが、やはりタイムボカンシリーズのいいところでしょうか。

 後にシリーズは『タイムボカン2000 怪盗きらめきマン』(2000年)で復活を遂げています。そして、その後にもシリーズ作品はいろいろな形で発表されました。そのため、今でもシリーズの知名度は低いものではなく、多くの人が知っていると思います。もっとも本作『イタダキマン』に関してはネタとして語られる程度かもしれません。しかし、タイムボカンの歴史を語るうえでは外せない作品であります。

(加々美利治)

【画像】『イタダキマン』のメカってどんなだっけ? 動物モチーフの変形ロボ(5枚)

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