『科学戦隊ダイナマン』の人気悪役「ダークナイト」登場から40年 戦隊のドラマを動かした「第三勢力」
さまざまなパターンでシリーズを盛り上げた第三勢力

前述しましたが、「戦隊シリーズ」では、たびたび第三勢力の登場が大きなドラマを生んできました。そのほとんどが戦隊にとって相いれない敵が増えることでしたが、敵同士のつぶしあいによる戦力の削りあいもあって、結果的に戦隊の知らないところで大きく物語が動き出すことになります。
この第三勢力の台頭と言えば、元祖はやはり『電子戦隊デンジマン』(1980年)に登場した「バンリキ魔王」でしょうか。結果的に当初の敵であったベーダー一族を乗っ取ってラスボスになります。強烈な個性を持った印象的な悪役でした。
『太陽戦隊サンバルカン』(1981年)に登場した「イナズマギンガー」も第三勢力として強大な力を持った敵です。しかし、その力を利用して機械帝国ブラックマグマを乗っ取ったのは、前作『デンジマン』でのリベンジを果たしたヘドリアン女王でした。もっとも、ふたりとも結果的にブラックマグマの真の支配者だった全能の神によって非業の死を遂げます。
次回作となる『超電子バイオマン』(1984年)では「バイオハンター・シルバ」と、その愛機である巨大ロボ「バルジオン」が登場しました。ダークナイト同様に出渕さんによるデザインで人気も高く、近年には戦隊シリーズの悪役では珍しく商品化されています。
商品化されたと言えば、『五星戦隊ダイレンジャー』(1993年)における第三勢力だった「大神龍」は異質な存在でした。大神龍は宇宙の秩序を守る存在で、悪といえる存在ではありません。しかし、その力は絶大で、その怒りを収めるために敵味方の間で前代未聞の休戦協定が結ばれたほどです。
第三勢力が戦隊側になった例として、『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002年)が挙げられるかもしれません。この作品に登場した「電光石火ゴウライジャー」は当初は第三勢力として暗躍、その後に敵である宇宙忍群ジャカンジャと手を組みますが、最終的にはハリケンジャーの頼れる仲間となりました。
このパターンのように合流せず、最後まで一定の距離を保ったのが『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(2018年)の両戦隊です。お互いにギャングラーという仇敵に対して協力することもありましたが、基本的には敵対する相容れぬ存在でした。その点では特異な作品だったと思います。
近年では第三勢力だけで収まらずに、敵対勢力が多く存在した『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(2022年)もありました。さまざまな勢力が入り乱れる中、当初の敵である「脳人三人衆」が、終盤ではドンブラザーズ入りするという展開を見せます。
このように第三勢力の存在がドラマを大きく動かすのが、「戦隊シリーズ」の持ち味なのかもしれません。それは平成以降の「ライダーシリーズ」が、それぞれの正義によってドラマを動かそうとする手法と似て非なるものでしょう。あくまでも善悪という基準の中で、第三勢力という見せ方に徹しているからだと思います。
(加々美利治)