『風の谷のナウシカ』40周年 ある「ボツ企画」がなければ名作は生まれなかった?
ボツ企画「ロルフ」が原案

その頃、宮崎監督はリチャード・コーベン氏のアメリカのコミック『Rowlf』をベースにした、長編映画「ロルフ」を企画していました。しかし、映像化に原作者の了解を得られなかったため頓挫したのです。
その『Rowlf』から「小国の運命を背負うお姫様」という着想を得て、オリジナル化したのが、マンガ『風の谷のナウシカ』です。宮崎さんは物語のイメージがかなり沸いていて、気に入っていたのではないでしょうか。これらのイメージボードは、『風の谷のナウシカ 宮崎駿水彩画集』?徳間書店?に掲載されています。
また、これは推察ですが、1980年代前半のマンガ界は、特に『タッチ』『みゆき』『ときめきトゥナイト』『Theかぼちゃワイン』など、美少女が登場するラブコメが流行した時代でした。『風の谷のナウシカ』も、男の物語より美少女が主役のほうが、男性ウケしやすく勝算が高いと考えたのかもしれません。
結果的に「ナウシカ」は男性ファンを獲得しましたが、これには宮崎監督の画力があったからこそ、といえるはずです。というのも、原稿は1日1枚しか描けないほどハイクオリティーな完成度だったからです。
こんな裏話があります。鈴木敏夫さんの著書『仕事道楽』によると、はじめは、映画を創る目的で原作マンガを製作したはずですが、宮崎さんは「映画企画が前提にあって漫画を描くというのは、これはやっぱり漫画に対して失礼だ。そんなつもりでやったのでは漫画として失格で、誰も読んでくれないんじゃないか。漫画としてちゃんと描く」と話してきたとのことでした。結局、マンガ『風の谷のナウシカ』はアニメーションにならない世界を描くつもりで執筆し、実際に映画化が決まったとき宮崎さんは困惑したそうです。
アニメ映画のほうが有名な『風の谷のナウシカ』ですが、マンガからのファンは「映画とは絵のクオリティーが全く違う」と、紙の方を推す人が多いそうです。映画とマンガは内容も違うので、ぜひ読んで欲しいところです。
ボツになった「戦国魔城」のイメージボードには、未来の名作につながる画がたくさん描かれています。そう考えると、「オールスターが登場する映画『戦国魔城』が観たいな?」……と思ったりもします。
(石原久稔)



