アニメ「1980年の変」? 富野監督の暗黒面が発動、宮崎監督は偽名に
宮崎駿という鉱脈を発掘した「水曜ロードショー」

劇場監督デビュー作『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)を完成させた宮崎駿監督も、その反動に苦しんでいました。アニメーターとしてそれまで培ってきたノウハウと情熱を惜しみなく注ぎ込んだ『カリオストロの城』でしたが、期待したような興収結果にはなりませんでした。
この時期の宮崎監督は「照樹務(テレコム)」名義で、『ルパン三世』第2シリーズの第145話「死の翼アルバトロス」と最終回となる第155話「さらば愛しきルパンよ」の脚本と演出を手掛けています。不遇期だったともいえる宮崎監督ですが、「さらば愛しきルパンよ」にはロボット兵を登場させ、声優の島本須美さんを『カリオストロの城』に続いて起用しています。
宮崎監督の頭のなかには、すでに『風の谷のナウシカ』(1984年)や『天空の城ラピュタ』(1986年)のイメージができつつあったようです。
劇場公開時はいまひとつの人気だった『カリオストロの城』でしたが、1980年12月に「水曜ロードショー」(日本テレビ系)でTV初放映され、視聴率21.2%を記録。ここから宮崎監督は脚光を浴びるようになっていきます。
スピルバーグ作品に影響を与えた『ドラえもん』
出崎統監督の『あしたのジョー2』(日本テレビ系)は、1980年10月から放映が始まりました。透過光、画面分割、ハーモニー(止め絵)などの「出崎演出」がふんだんに盛り込まれています。アニメ監督の演出スタイルが、大きくクローズアップされるようになった時代でもありました。
1980年は劇場版『ドラえもん』がスタートした年でもあります。1979年から始まったTVアニメ『ドラえもん』(テレビ朝日系)が好調で、長編第1作となる『のび太の恐竜』が公開されました。TV版とはひと味違った、のび太と恐竜のピー助との温かい交流を描いた冒険談は幅広い層に支持され、2006年、2020年にリメイクされる人気作となっています。スティーブン・スピルバーグ監督の大ヒット作『E.T.』(1982年)にも影響を与えたといわれています。
春休みシーズンには劇場版『ドラえもん』が公開され、宮崎監督や『ガンダム』の新作がファンの間で賛否を呼ぶという構図は、この頃からずっと続いていることになります。その間、日本は平和を享受したのか、それとも社会の歪みから目を背けてきたのか……。
「みんな、星になってしまえ!」
イデオンの操縦者のひとりである「カーシャ」は、いつまでも変わらない人間たちの愚かさに絶望して、そう叫びます。確かに人間は利己的かつ保守的で、同じ過ちを何度も繰り返しがちです。そんな人間の深い業を描くまでに、この時代のアニメーションは成熟したといえるのかもしれません。
(長野辰次)


