アニメファンの憧れ「ガイナックス」はなぜ消えた 『エヴァ』のヒットも救済とならなかった理由
「お金」が全てを狂わせた?

『プリンセスメーカー』チームの離脱もあり、窮地に陥ったガイナックスは『オネアミスの翼』の続編である『蒼きウル』の制作を試みますが、資金の問題で中断を余儀なくされました。絶望的な状況のなか、庵野氏が企画した『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、エヴァ)は社会現象となるほどのヒット作となりました。しかし、GAINAXは製作委員会への出資をしておらず、追加報酬は庵野氏の監督および脚本の印税のみ。資金難に苦しむ状況に変わりはありませんでした。
そして、1997年に劇的な変化が起こります。製作委員会が『エヴァ』関連商品の窓口をガイナックスに移したため、版権収入が直接入るようになったのです。しかしガイナックス上層部は、慣れない大金を適切に扱い切れる人たちではありませんでした。このときが「終わりの始まり」だったといえるでしょう。1999年には、当時代表取締役を務めていた人物とガイナックスが「所得隠し」で東京国税局から告発を受けています。
その後、『エヴァ』の版権収入が衰えるにつれて、ガイナックスの資金繰りが悪化し始めます。庵野氏も脱税事件をきっかけに取締役に就任して経営の改善を試みたものの、自身の意見を無視され、なおも放漫経営を行う経営陣に大きな不満を持ち、自身のスタジオである「カラー」を設立してガイナックスを退社しました。
なお、『エヴァ』の版権はカラーが持つことになりましたが、版権管理と商品化窓口はガイナックスが引き受けることとなり、利益を分け合う形となりました。この庵野氏の温情は、後に仇となりました。
その後ガイナックスは『天元突破グレンラガン』や『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』などのヒット作を手掛けますが、2012年ごろから経営陣の乱脈経営により再び財政が悪化してしまいます。カラーに対する『エヴァ』関連の使用料も滞るようになり、逆にガイナックスは庵野氏に資金の借り入れを申し込む事態になりました。
2015年に放送されたTVアニメ『放課後のプレアデス』を最後に、新作コンテンツでガイナックスの名を見ることはなくなりました。ちょうどこの時期には「ガイナックス」の名前を使った子会社が日本各地で立ち上げられ、それぞれが独立して行動するようになります。2016年には制作部門のスタッフを全員解雇して別スタジオに移籍させ、ガイナックスは制作会社としての実態を失いました。
その後は2019年に当時のガイナックス代表が「性加害問題」で逮捕され、資料の散逸や、IPの売却などを経て、見る影もなくなったガイナックスはついに倒産へと至りました。
気鋭のクリエイターが集まって設立されたガイナックスは、80年代から90年代のアニメファンに新鮮な驚きと興奮をもたらしました。あのころ多くのアニメファンにとって憧れの存在だったことに間違いはなく、この先もずっとアニメの歴史とアニメファンの心に「ガイナックス」の名前が刻まれていくことでしょう。
しかし、『エヴァ』がもたらしたお金を上手に扱えなかったことから歯車が狂い、ガイナックスはついに姿を消しました。いまも数多くの素晴らしい作品が次々送り出される世の中ですが、そのなかに「GAINAX」の文字がないのは、一抹の寂しさを感じざるを得ないのです。
(早川清一朗)



