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基本負ける? 特撮ヒーロー『アイアンキング』が弱すぎた理由とは

弱くなった理由は脚本家のこだわり?

「アイアンキング 【甦るヒーローライブラリー 第35集】」Blu-ray(TCエンタテインメント)
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 では、誰が敵を倒すのかというと、主人公である弦太郎です。もちろん、変身はできないため、生身の状態で「アイアンベルト」というムチに変化する武器を使って巨大な敵に立ち向かいます。第1話では、前述のバキュミラーに対してムチで対抗し、最終的にはバキュミラーのコントローラーを投げつけて大爆発(理屈は不明)させ、勝利を収めるのでした。

 本作では基本的に止めを刺すのは弦太郎であり、アイアンキングは巨大な敵たちを足止めする程度の存在なのです。その後も、アイアンキングが勝利することなく話が進行していきました。そして、初勝利を挙げたのは、第16話に登場した怪獣ロボット「トラギラス」との戦いで、その16話以降はアイアンキングが勝利する流れになるのでした。

 16話以降から「ヒーローが勝つ」という王道のストーリーに変わりましたが、なぜ、それまでのアイアンキングは弱かったのでしょうか。

『アイアンキング』の脚本を担当したのは、『ウルトラマン』や『シルバー仮面』などの作品も手がけた佐々木守さんです。バラエティ番組『マツコ&有吉の怒り新党』の2012年11月7日放送の回では、『アイアンキング』が特集されアイアンキングが弱い理由について「佐々木さんが敵役に対する強い思い入れがあったため」と説明されていました。

 では、佐々木さんは敵にどのような思い入れがあったのでしょうか。洋泉社の書籍『夕焼けTV番長』(1996年発行)では、佐々木さんへのインタビューが掲載されています。佐々木さんは「テレビじゃ反体制の側を主人公にはできないよ」と語りつつ、当時の反体制運動への共感から、彼らを登場させたかったことを語っています。敵役である「不知火一族」(第1話から第10話)には、アイヌや沖縄の人びと、サンカ(山窩)など日本の少数民族を、「独立幻野党」(第10話から第18話)には、パレスチナ解放人民戦線、日本赤軍をイメージしていたことも語っていました。

 また、YouTubeチャンネル「シネマ野郎」では、『夕焼けTV番長』でのインタビュアーも担当したライターの岩佐陽一さんによる、2000年の生前の佐々木さん(2006年没)へのインタビュー動画が公開されています。

 佐々木さんはインタビュー内で、「(自分としては)どっちかと言うとね、不知火一族とか独立幻野党の方に肩入れしたいんだよね。ところがそうもいかない」「(不知火一族)彼らもつまり日本原住民だったわけでしょ。つまり弥生時代に入ってきたやつらに我々は侵略されたんだ」「不知火一族とか独立幻野党なんてのは、ああいうところに逆に僕なんかね かなり自分の思いを込めてるところがあるんですよね。ドラマ的には敵役しているけどもね」と、敵キャラたちについての思い入れを語っていました。

 また、佐々木さんは、当時の若者には「世の中を変えたい」という気持ちがなくなったと言及し、自身が若い頃の同世代には「世の中を変えるんだ」「権力と戦うんだ」という精神があったとも話しています。恐らく佐々木さんは、そういった背景を敵役に込めたことで、より思い入れが強くなったのではないでしょうか。

 一般的な「ヒーロー像」とはかけ離れており、昭和の作品なのにもかかわらず、新鮮な感覚で楽しめる『アイアンキング』は、Amazon Prime Videoの「マイ☆ヒーローチャンネル」で視聴可能です。

(LUIS FIELD)

【画像】え…っ? かっこよ!これが最終回で「マント」を羽織っていた時のアイアンキングです(4枚)

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