基本負ける? 特撮ヒーロー『アイアンキング』が弱すぎた理由とは
最後に敵を倒してくれる特撮ヒーローは多くの子供たちを魅了し、大人になってからも心のなかに残り続けているものです。勧善懲悪のストーリー展開が王道ですが、1972年から放送された『アイアンキング』はとにかく弱いことが特徴でした。
変身するのは主人公ではなく相棒

ウルトラシリーズや仮面ライダーシリーズなどの特撮作品でヒーローが悪党を倒す姿は、多くの子供たちを魅了してきました。まさに「王道」の展開といえるでしょう。
しかし、言い換えれば、「最後にヒーローが勝つ」という「予定調和」が成立してしまっている面も否定できません。そういった決まった展開を崩そうとした珍しい作品が、『アイアンキング』です。本作は、勧善懲悪の流れに慣れ親しんだ世代にとって、驚かされる設定が多い作品といえるでしょう。
『アイアンキング』は1972年から1973年まで放送された特撮番組で、「国家警備機構」のエージェントである主人公「静弦太郎」とパートナーの「霧島五郎」が、巨大ロボットや怪獣たちに立ち向かうという物語です。
近年、動画配信サービスが普及したこともあり、「世代ではなかったヒーローもの」を視聴することが増えた筆者は、『アイアンキング』の第1話を観たところ、想像していた特撮ヒーロー作品と違って驚かされました。
定番のヒーロージャンルであれば、主人公が変身して悪党たちと対峙しますが、巨大ロボットであるアイアンキングに変身するのは、主人公の弦太郎ではなく、パートナーの五郎でした。また、主人公以外が変身しているにしても、ヒーローなら勝利が期待できるものと思いきや、基本的にアイアンキングは敵に負けてしまいます。
たとえばウルトラシリーズであれば、活動時間は3分までとされているのに対し、アイアンキングの場合は、たったの1分です。体内の水分がなくなると活動できなくなり、時間が経過すれば、胸にある星型のライトが点滅し、活動限界を迎えると五郎の姿に戻ります。このような厳しい設定で悪党たちと渡り合うのは難しく、敗北が多く描かれました。
第1話「朝風の密使」を例にすると、巨大ロボット「バキュミラー」と対決したアイアンキングは、必殺技「アイアンキック」を繰り出すものの、一撃で仕留められずにあっさりと反撃されています。ヒーローらしく空中で回転しているシーンもあり、「このまま倒すのか」と期待した矢先の展開で驚かされました。