「綾波派、ちょっと来なさい」愛され無口系ヒロインの系譜と彼女たちの「共通項」は
綾波レイ、長門有希、ホシノ・ルリ。多くのアニメファンに愛される人気ヒロインの彼女たちには明らかな共通項があります。なぜ無口系ヒロインが未だに多くのファンの心を掴んで離さないのでしょうか。
男性にとって女性は永遠の謎
アニメの人気ヒロインのなかには、感情表現が乏しい無口なキャラクターが少なくありません。そのようなヒロインに魅力を感じてしまうのはなぜでしょうか。
さて「無口系ヒロイン」、創作物におけるその源流をたどるとなるとキリがなくなりそうです。よって、「2024年現在のアニメにおける無口系ヒロインの原型」と、少しだけ条件をつけてみると、おそらく『新世紀エヴァンゲリオン』の「綾波レイ」(以下、綾波)の名前が挙がるでしょう。同TVアニメ版以降のアニメやマンガ、ライトノベル作品には、彼女の影響を感じられるキャラクターが数多く登場しました。
綾波の第一印象は物静かで生活感のない、無機質な少女といったものでしたが、主人公「碇シンジ」との交流が深まるにつれて、少しずつ人間らしさを見せるようになります。普段は控えめな綾波が使徒との戦いで見せる強い覚悟と、健気な自己犠牲に多くのファンが心を奪われました。
綾波の魅力とは「人形のような少女が運命の少年と出会って意志をもった人間になる」「透明感があって健気で壊れそうな少女に保護欲がかきたてられる」という、王道で分かりやすいものだといえるでしょう。
しかし彼女の魅力はそれだけではありません。「綾波レイ」というキャラクターの描かれ方に人形愛めいたものが感じられるからです。そこは『新世紀エヴァンゲリオン』最大の謎である「人類補完計画」のシナリオと深い関係があります。
実は「綾波レイ」は純粋な人間ではなく、大量に製造される「碇シンジの母親のクローン」の一体に「魂」が宿ったものでした。つまりシンジ君は自分の母親の形をした少女に特別な感情を抱いていた、ということになります。また綾波の「肉体」が文字通り人形のように破壊される点も、彼女を語る上で避けて通れません。
TVアニメ第23話「涙」では、「赤木リツコ」が水槽のなかにある大量の綾波のボディを破壊し、映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』では、地球サイズに巨大化した綾波の崩壊していく様子が、グロテスクでありながら非現実的なほど美しく描かれ、一部のファンのトラウマになりました。
綾波レイという女の子には、単なる「萌え」のひとことでは言い表せない複雑さがあるといえるでしょう。