「神ゲー」原作ロボットアニメでファンの評価が割れた作品…何がどうしてそうなった?
「神ゲー」はデキが素晴らしいからアニメ化される、しかし完成度が高すぎるため映像化が難しい……そのような困難に立ち向かった作品の数々を振り返りましょう。
ラブコメに振り切った『ガンパレ』、中年主人公と巨大ヒロイン(?)の『Z.O.E』
恋愛もアリ、ロボットも大活躍する……そのような欲張りセットでファンの心をつかんだ「神ゲー」は、メディアミックス的にもニーズが高いためか、たびたびアニメ化されてきました。が、ストーリーとメカニックともに重すぎる期待を掛けられるだけに、ファンからの賛否も分かれがちです。
たとえば『ガンパレード・マーチ』の原作ゲームは、謎の生命体「幻獣」が地球に襲来し、人類が存亡の崖っぷちにあるなか、学兵部隊に属する主人公がやりたい放題できる自由度の高いゲームです。一度も学校に行かずロボット(士魂号)にも乗らず、あるいは同級生のソックスを集め回る変態に徹することも思いのままです。
そのアニメ化である『ガンパレード・マーチ 新たなる行軍歌』(2003年)は、序盤こそ幻獣と死闘を繰り広げてゲームの雰囲気を醸し出していますが、すでに死亡済みの原作キャラがいるなど、徐々にかけ離れていきます。
やがて中盤、激戦のさなかケガを負ったヒロイン「芝村舞」を背負って包囲網を突破する気弱な少年「速水厚志」……という辺りからふたりは急接近していきました。恋に不器用な彼らはクラスメートらに影ながら応援され、心の傷を癒やしつつ分かり合うという最終回を迎えます。
もしも独立したアニメであれば、「多くのキャラが織り成す群像劇を手際よくまとめたラブコメディ」という評価が得られたでしょう。しかし、原作ゲームで愛された主人公の奇矯な行動もなく、世界の根幹にある複雑な設定には触れられず、ロボットバトルも終盤ではほとんどありません。
そもそも、1周に何十時間もかかり、何周も遊ぶプレイヤーもザラにいるゲームを、たった12話×23分のアニメに落とし込むのは無理があったのでしょう。
そうした「クリアに長時間かかるゲームを尺の短いアニメに圧縮」とは異なるアプローチを取ったのが、『Z.O.E Dolores, i』(2001年)でしょう。
本作はPS2用ゲーム『ZONE OF THE ENDERS』(以下、Z.O.E)と同じ世界観ながら、独立した物語が描かれます。メディアミックス戦略を展開し、『Z.O.E』ワールドの広がりを体験してもらおう、という狙いです。
原点であるゲーム『Z.O.E』のプロデューサーは「メタルギアソリッド」シリーズで知られる小島秀夫監督ということで大きな注目を集め、小気味のいい操作性と独特の浮遊感が味わえる3Dアクションが好評を得ました。
舞台は22世紀であり、人類が宇宙に進出して太陽系にいくつかの植民地を建設した時代です。地球と火星住人との緊張が高まるなか、強力な人型ロボット兵器「オービタルフレーム」をめぐる物語が展開されます。
OVA『Z.O.E 2167 IDOLO』(ゲーム『Z.O.E』と同時発売)が史上初のオービタルフレームをめぐる「ダイモス事件」、『Z.O.E』がその数年後、さらに本作『Z.O.E Dolores, i』は『Z.O.E』の後で『IDOLO』の直接の続編という構成です。
主人公は49歳で妻子持ちの「ジェイムズ・リンクス」であり、その彼を巨大ロボット「ドロレス」が「おじさま」と呼ぶ第1話は衝撃的でした。ドロレスは巨大な「箱入り娘」(本当にコンテナに入っていた)で、声優は桑島法子さんです。
内向的な少年がロボットの争奪戦に巻き込まれ、戦いを重ねるうちに心身ともに成長していく……ゲーム『Z.O.E』本編をプレイした人たちは、本作には面食らったことでしょう。が、非常識なバディ(ドロレス)に振り回されながら、親子関係を修復しようと奮闘するジェイムズの姿はハリウッド映画のようでもあり、独自の面白さを確立していました。