居候アニメの傑作『ハクション大魔王』 視聴者が号泣した伝説の最終回とは?
魔王以上の人気キャラだった「アクビ娘」

あくびをすると壺から現れる「アクビ娘」も忘れられないキャラクターです。魔王の娘ですが、明るくておしゃまな性格で、とても人気がありました。エンディング曲『アクビ娘の歌』は、途中から主題歌『ハクション大魔王』を押し除けてオープニング曲になったほどです。
中東の逸話『アラジンと魔法のランプ』をモチーフにした『ハクション大魔王』ですが、アクビ娘は米国のコメディドラマ『かわいい魔女ジニー』から影響を受けていると思われます。日本では1966年からテレビ放映された『かわいい魔女ジニー』は、いたずら好きなセクシーな魔女が宇宙飛行士の家に居候するというドラマでした。小悪魔的なキャラクターながら、健気な一面も持つアクビちゃんは、ジニーと通じるものを感じさせます。
そう考えると、押井守監督の出世作となった『うる星やつら』の鬼娘・ラムちゃんも、ジニーやアクビ娘の系譜に連なるキャラなのかもしれません。かわいい魔法少女と一緒に暮らせたら楽しいだろうなぁ……。いつの時代も男たちは、そんなことを夢想してしまうようです。
まさか? 視聴者が号泣した感動の最終回
魔王の天敵・ブルドッグのブル公に追われ、1年間にわたってドタバタを重ねてきた『ハクション大魔王』ですが、最終回はシリアスモードに転調し、視聴者を号泣させました。魔王とアクビ娘は魔法の国へ帰ることになったのです。人間の世界には100年後にしか戻れないそうです。それまで魔王とアクビちゃんにさんざん振り回され続けてきたカンちゃんとその家族でしたが、唐突な別れにショックを受けてしまいます。
魔王とアクビちゃんが魔法の国へ帰らなくて済むように、カンちゃんたちはクシャミもあくびもしないように必死で我慢します。でも、ふたりが魔法の国へ帰る期日となる、月食の夜が訪れました。不思議な力が働き、カンちゃんのお父さんはあくびを、カンちゃんはクシャミをしてしまいます。大魔王とアクビちゃんは壺のなかへと消え、壺自体も消滅するのでした。ほんの一瞬の出来事でした。
大食漢で、算数が苦手で、ろくに役に立たなかった大魔王ですが、カンちゃんにとっては掛け替えのない少年時代を一緒に過ごした仲間だったのです。カンちゃんはクシャミをするたびに、さびしいようなほっこりするような不思議な気分になるのでした。
新作『ハクション大魔王2020』では、カンちゃんの孫にあたるカン太郎(CV:島袋美由利)のところに、魔法の国の王位を継ぐ修行のためにアクビちゃん(CV:諸星すみれ)が現れることになるそうです。魔王(CV:山寺宏一)とアクビちゃんの弟・ブゥータ(CV:山下大輝)も登場するとのこと。50年ぶりに人間界に戻った魔王ファミリーは、一体どんな騒ぎを起こすのでしょうか。
(長野辰次)